即時充填治療の材料 その2

前回はアマルガムについて解説した。
今回は、即時充填治療の主役・コンポジットレジンである。

コンポジットレジン修復

コンポジットレジンとは

コンポジットレジンは、虫歯で欠損した部分をその場で修復する白い材料。
レジン(樹脂)とフィラー(無機質)の混合物。
要は強化したプラスチックを詰めることである。

レジン修復が生まれたのは、第二次大戦中のドイツ。
戦場でも簡単に治療がおこなえるよう開発されたらしい。
あの戦乱のさなか、ジェット機やロケット、ミサイルのみならず医療品でも革命をおこしていたのである。
さすが合理主義の科学大国というところか。

この材料の登場は、歯に詰め物をするために、大きく削り込まなくてはならなかった金属修復の概念を根底から覆すこととなる。
金属をはめるには、健全な部分を多く削る必要があったためだ。
それを、最低限の切削で済むようになったのである。

最初のレジンは強度など実用面では不十分だったが、1960年代に一気に改良が進む。
強度が不十分な樹脂に、フィラーと呼ばれる石英などの粉末を加えることで、強度を確保することに成功する。

当院で使用しているレジンの一部
コンポジットレジン

コンポジットレジンによる治療

白くて歯に近い色調を持つレジンであるが、レジン自体は歯に接着する能力を持っていない。
そのため、ボンディング剤と呼ばれる接着剤を、削った穴に塗る必要がある。
さらに、樹脂と歯質の接着性を高めるために、エッチングと呼ばれる酸処理で、歯質を溶かして接着面を改良する。
これらの操作は、ワンステップで同時におこなえるようになっているものが多い。

エッチング・ボンディングが終了したら、レジンの充填である。
いろいろな色調・粘度のレジンのうち、最も適切なものを選びつめていく。
現在のレジンは、ほとんどが光重合型。
特定波長の光に反応する光触媒が添加されており、5秒~20秒で硬化する。

硬化後は、咬合調整ならびに形態修正。
これだけで治療が完了する。

光照射器

光照射器

 

ネイルとレジン

光で固める、というところで、女性であればネイルアートを思い浮かべた方もいるはず。
まさに、ネイルはレジンの応用。
そもそもネイルのメーカーの松風は、歯科材料のメーカー。

コンポジットレジンの欠点

水に弱い

レジンは、硬化するまでは非常に水に弱い。
そのため、部位によってはレジンによる治療が困難な場合がある。

変色する

レジンは、所詮はプラスチック。
一昔前の製品に比べるとずいぶん改良されたが、やはり経年劣化による変色は避けられない。

汚れに対する親和性が高い

プラスチックゆえに、柔らかく歯磨きによっても目に見えない細かい傷がつく。
表面性状の粗造になったレジンには歯垢がつきやすい。
よって接する歯周組織の炎症を引き起こしやすくする。
プラスチック製のお椀が、くすんでくるのを想像してもらえるとわかりやすい。

重合収縮がある

レジンは硬化の際、収縮してしまう。
これを重合収縮という。
これにより、歯質とレジンの間に隙間ができやすく、そこから再びう蝕が発生しやすい。(二次う蝕)
窩洞にはまり込んでいるレジンは、隙間があってもはずれないため、虫歯が神経に到達して気づくこともよくある。

重合収縮のイメージ
重合収縮のメカニズム

強度

大きなう蝕を治せるほどは強度がない。
そのため、ある程度の大きさのものでは金属冠などが必要となる。

適応

前歯部の虫歯の治療には第一選択。
審美的にも、歯の色と近く、これに代われる材料はないといって良い。
ただし切端や、小児の前歯部では、強度やしなやかさの点で使えない場合がある。

臼歯部でも、咬合面に限局する虫歯であれば、防湿さえしっかりしていれば良好な成績を残す。
しかし、虫歯の取り残しや、重合収縮の欠点により、多くの場合二次カリエスになっていることが非常に多い。

審美的に完璧なレジン充填は、自身の歯と全く区別がつかない。
ただし、そのようなレジン材料は保険適用外の製品のため、自費治療となる。

連休後に続きます。