歯の根の治療

歯の根の治療は大変である。
もともと北大時代の私の専門分野。
今は退官された小松准教授の薫陶を受け、技術を磨いた。
今回からしばらく、根管治療がどのようなもので、どうあるべきかを解説してゆく。

根管治療とは

今はあまり聞かないが、差し歯という言葉がある。
差し歯とは、文字どうり根っこだけ残った歯に穴をあけて、軸のついた人口歯を差し込むもの。
今では、軸の部分にあたるコアと、かぶせもの部分を分けた、3階建て構造になっている。

その根っこの部分は、そのままでは使えない。
歯にはもともと神経があり、神経が入っていた空間が骨にまで続いている。
もし何もしなければ、すぐに歯を通して骨が細菌感染してしまう。
それを防ぐために、根っこの先端側に栓をしなくてはならない。
その作業を、根管治療という。

根管治療が必要な歯

根管治療は、神経の入っている空間が解放状態になった場合におこなわれる。
一部神経を残すやり方も、乳歯などではおこなう場合があるが、基本的には神経はすべて除去される。
根管治療は大きく二つに分けられる。

麻酔抜髄

神経が生きており、神経への細菌感染がみられない場合に行う。
虫歯で歯が痛くて、神経に達した場合がこれである。
神経は生きているので、麻酔下での処置となる。
内部の神経を残らず除去し、洗浄の上、封鎖する。
封鎖に至るまでの回数は少ない。

麻酔抜髄が必要な歯のレントゲン像

麻酔抜髄適用歯

感染根管処置

初回の感染根管処置

神経が感染や打撲などで死んでしまった場合に行う。
神経は死んでいるので、麻酔は必要ない。
ただし、根管内部は細菌感染があり、場合によっては根の先の骨にまで感染が及んでいる。
そのため、無菌化のうえ、臨床症状が無くなるまで封鎖できない。
封鎖に至るまでの治療回数・時間ともに長くなる。

感染根管処置が必要な歯のレントゲン像

感染根管

再度の感染根管処置

抜髄や感染根管処置をおこなった歯が、予後不良で再び根管治療が必要になるケース。
根管の複雑さなどのため、完全に無菌化できなかったりした場合に、数年たった後病巣や腫れが出現して要治療となることがある。
かぶせものやコア、封鎖材など全て除去しなくてはならず、治療は大変。
封鎖に至るまでの治療回数・時間は最も長く、場合によっては保存不能となることも少なくない。

 

再度の根管治療が必要な歯のレントゲン像

再根管治療

続きます