口が開きにくい
「大きな口の木の実ナナ♪」というのは、嘉門達夫の「大きな栗の木の下で」の替え歌。
素晴らしきフレーズだと思う。
職業柄、大きな口の方にはなんとなく好感をいだいてしまうのは、致し方のないこと。
ところが大きな口にもかかわらず、治療が困難な場合がある。
それは、開口量。
あごの関節が十分に開かない場合である。
今回は、この開口について解説する。
顎が開くメカニズム
顎がはずれた、という言葉がある。
実は人間の顎関節は、大きく口をあけようとすると、外れて開口するようにできている。
少し開ける分には、関節窩(くぼみ)の中で顆頭(でっぱり)がちょうつがいのように回転して開口する。
ところが、大きく開けようとすると、顆頭は関節から抜け出して前方に滑走する。
関節の物理的な制限から開放されて、口は大きく開くことができる。
抜け出した顆頭がもとの正常な位置に戻らなくなった状態が、俗にいう「顎がはずれた」状態なのである。
開口障害の原因
一口に開口障害といっても、原因は様々である。
通常歯科医院に来院するのは、関節に由来するトラブルがほとんどである。
しかしながら、それ以外の原因のものは見逃すと取り返しがつかない場合がある。
関節性開口障害
通常であれば、上あごと下あごの歯の間には、3本程度の指が入る程度開口する。
ギャグゲージと呼ばれる特殊な物差しで測ることができるこの間隔は、約40ミリ。
開口障害には、顎関節の構造である関節円盤が大きくかかわっている。
関節を構成する顆頭と関節窩は、直接的に関節を構成していない。
この二者の間には、関節円盤という軟骨組織が介在している。
ひざの軟骨がすり減って、というような関節障害が、顎関節でも同じようにおこるわけである。
関節円板
ただし、顎関節での軟骨トラブルは、すり減っておこるというより、関節円盤のずれでおこることが多い。
口を開け閉めした時にコキコキと音がするのは、この関節円盤が前方に偏移していることが原因であることが多い。
このような音を、関節クリックといい、痛みなどの症状がなければ、通常は治療をおこなわないのが普通である。
音などの症状があっても、元の状態に戻ることができるような関節の障害を、復位性関節円板転位という。
上記のような症状もすすんでしまうと、非可逆的な関節円盤の偏移をおこす。
関節窩から逸脱した関節円盤が自然に元の位置に戻れない状態で、この場合は口がせいぜい2センチ程度しか開かない開口障害をおこす。
関節円盤が途中で引っかかったりしているような状態になっており、この状態を非復位性関節円板転位(クローズドロック)という。
その他にも関節性開口障害には、顎関節の変形によるものなどがある
続きます