即時充填治療の材料

虫歯に侵された歯の虫歯を除去し、削った穴に詰め物を詰めて固めて治すような治療法を充填修復という。
一日で虫歯が治った、というのはこの充填修復。
削った歯の型を取って、金属を鋳込んでつくるといった修復法と異なり、割と簡単に治ってしまう印象がある。
今回は、その修復法と特徴を述べていく。

アマルガム修復

銀と水銀の合金を口腔内で固めて治す治療法。
長らく歯科充填修復で活躍した古典的治療法。
日本では約30年前に発売が中止された。
世界的にはまだまだ微妙に進化しつつ、現存している。

現在でもアメリカで発売されているアマルガム

アマルガムカプセル

発展途上国や、アメリカなどの貧困層はまだまだアマルガムに頼るところが大きい。
昔は手で合金を作成していたが、今は器械にセットされると自動練和される製品などもある。

日本では、水俣病などでネガティブなイメージがあるため、他の充填材料にとってかわられた。
確かに金属アレルギーという面では問題があるが、水俣病の原因となるような有機水銀への化学的変化は口腔内ではおこりえない。
もしおこるようであれば、水俣病は原因が早期に発見され、あれほどまでの重大公害にはなっていない。

ところが、このようなネガティブなイメージを利用した、ジャンクサイエンス(似非科学)の温床になっているのが、歯科アマルガム。
食い詰めた歯科医師が、アマルガムを除去させようとあの手この手でウソを書いているのが散見される。
化学的な物性は、きちんと化学が理解できる歯科医師であれば、問題にならないことは理解できるはずだ。
きちんと充填され、問題の無い充填物は外す必要はないのである。

アマルガムは、それ自体には接着性がない。
合金となり、固まると体積が増える。
これを利用して、アンダーカットのある窩洞(詰め物を詰める穴)を掘り、充填することで膨張し、外れなくなる。
膨張するため、歯質との隙間が高い封鎖性を得ることも利点である。
現在、アメリカなどではアマルガムと歯質を接着するボンディング剤が発売されている。

アマルガムの維持の仕組み
アマルガムの維持機構

長くアマルガムを詰めていたところを外すと、周辺歯質が黒く変色している。
これは、アマルガムタトゥーといい、合金中の銀イオンが溶出したもの。
虫歯ではなく、むしろ抗う蝕性があり除去の必要がない。

欠点としては、アレルゲンになりうること。
辺縁破折といい、薄く伸びた辺縁が金属疲労で欠けること。
操作が難しく、術者の腕の差が出やすい。
目立つことなどである。

何かと悪者にされがちなアマルガムであるが、うまいドクターのつめたものは非常にきれいで予後も良い。
発売中止になって久しいが、40代以上の患者では今でも見かけることがある。

続きます