歯を抜く必要があると伝えると、返ってくる言葉は大体「痛くないですか?」
抜歯の時は、麻酔をしているので痛くはない。
しかし、抜歯をしてから数日たってから、痛みが出てくる場合がある。
それは、ドライソケット。
通常、傷口は血餅と呼ばれる凝固成分でふさがれる。
しかし、何らかの原因で抜歯窩から血餅が流出してしまうと、抜歯窩は骨がむき出しになり疼痛を主体とした症状を呈する。
他に、頭痛、開口障害、排膿、発熱、口臭など。
要はかさぶたにあたる、傷口を覆っているものがなくなってしまった状態。
耐え難い痛みが継続する。
臼歯部、特に親知らずの抜歯で好発する、前歯部では頻度は少ない。
通常3~5%程度といわれるが、親知らずでは10~20%で発症するとされている。
簡単に抜けて抜歯窩の骨の侵襲が少ない場合に、多く発生する感がある。
原因は、舌で抜歯窩を触ったり、過剰にうがいしたりすることが原因。
親知らずが顎舌骨筋の付着部位となっている場合は、特に注意を要する。
フリーになった顎舌骨筋が抜歯窩の歯肉弁を、舌を挙上するたびに運動させてしまう。
他にも、喫煙や運動、女性の生理などもある。
なるときは気を付けていてもなるので非常に厄介。
治療法は二次感染を防ぎつつ、疼痛を緩和する。
基本は抗生剤の投与と、痛み止めの服用。
他には抜歯窩の縫合をおこない、外界からの刺激を遮断する方法。
抜歯窩の骨表面を麻酔下で掻爬し、出血を促す方法。
レーザーや血餅挿入も試したことがあるが、言うほどの効果は感じられなかった。
もっとも効果が高いのは、シーネ。
抜歯窩自体を覆ってしまう樹脂(レジン)のカバー。
印象して、速乾性のキサンタノなどの咬合採得用の石膏を流す。
できた模型上でレジンを築盛して作成する。
固定方法は、ノンクラスプデンチャーに準じた前方歯牙固定方式。
これは私のオリジナル。
患者自身が清掃をおこなえる優れもの。
欠点は、保険点数が高く、窓口支払いがかかること。
いずれも治癒には2~3週かかるが、感染を伴う場合には長引く傾向がある。
ドライソケットになってしまったら、速やかに歯科医のもとで治療を受けるのが得策だ。
抜歯後のトラブル・ドライソケット (完)