口の中が乾く
夜中、口の中が乾いて目が覚める。舌が乾いて痛みを覚える。
このような症状が多く出るのが、冬場。
舌の痛みや口臭で来院されるのが、多くなる季節。
このような症状は、口腔乾燥症。
口腔乾燥症は、更年期以降の女性に特に多く、人口の25%が罹患しているという。
特に60代以上の高齢者においては、30%をこえる。
口腔乾燥単体でも十分に厄介であるが、他の口腔疾患にも多大な影響を与える困ったもの。
今回は、この口腔乾燥症について解説する。
唾液の役割
唾液は一日でおよそ1~1.5リッター分泌される。
唾液の役割は意外と多岐にわたる。
- 保湿作用
- 消化作用:デンプンを分解するアミラーゼによる
- 抗菌・抗ウイルス作用:ラクトフェリン、リゾチーム、免疫グロブリンAなど
- 自浄作用
- 緩衝作用:酸性・アルカリ性に傾いた口腔環境を元に戻す
- 石灰化作用:ハイドロキシアパタイトにより、微小虫歯の修復
口腔乾燥症ではこれらの作用が低下するため、う蝕や歯周病のリスクは跳ね上がる。
また、摂食障害や、味覚障害、口臭なども併発することがある。
原因
口腔乾燥の原因は、一過性のものと、唾液腺自体に問題のあるものとに分類される。
口呼吸によるもの
カゼや鼻疾患などで鼻呼吸ができずに、口呼吸となる場合。
多くは原疾患が解消すれば治るが、副鼻腔炎(ちくのう症)などで長きにわたって口呼吸すると、習慣になってしまう場合がある。
特に冬場は、空気が乾いているのに加え、風邪なや花粉症などでおこりやすい。
薬剤によるもの
多くの薬剤は、唾液の分泌を抑制する傾向がある。
特に抗うつ薬などは、著しく唾液分泌を抑制する。
薬剤の服用を中止すれば解消するが、全身リスクを抑えるために服用している場合が多く、すすめられない。
自己免疫疾患によるもの
シェーグレン症候群は、唾液腺や涙腺に対する自己免疫疾患。
放っておくとどんどん唾液腺は破壊されていく。
50代の女性に多く、男女比は1:14。
ドライアイを併発していれば、本疾患を疑う必要がある。
全身の臓器にも障害が出る可能性があるため要注意である。(詳しくはこちら)
加齢によるもの
更年期以降の女性に特に多くみられる。
唾液には、食事などのさい分泌される刺激唾液と、睡眠中などでも分泌される安静時唾液とがある。
閉経後の女性は、この安静時唾液の分泌能が低下する場合が多い。
食事などでは特に気にならないため気づきにくく、口臭を指摘され口腔乾燥が判明する場合が多い。
治療
鼻疾患などの原疾患がある場合は、その疾患の治療で解消する。
それ以外のものは、基本的に対症療法が主体となる。
口腔保湿剤や水分などで、こまめに積極的に保湿をおこなう。
人口唾液も有効。
唾液分泌の促進として、唾液腺のマッサージによる物理的刺激を与えたり、漢方薬(麦門冬湯・白虎加人参湯)の服用もすすめられる。
シェーグレン症候群では、口腔以外に症状がある場合は、免疫抑制療法を行う場合がある。
他に唾液の作用の低下に対して、口腔清掃の徹底が要求される。
長期にわたる唾液量の低下は、歯周病の進行や、多発う蝕を容易に引き起こす。
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総論
口腔乾燥は、罹患人口も多く、非常にありふれた疾患。
しかしその影響は、長期的に憂慮すべきものである。
もし心当たりがあるならば、積極的な医療機関の受診が賢明である。
口腔乾燥症 完