大きくなったら、では遅い

歯医者にいくのはどのようなときであろうか。
多くの人はできれば近寄りたくもないのが、歯医者であろう。
痛くなったらいく、という人が多数だと思う。

ところが痛くなってからでは、すでに神経に達して時間も費用もかかるのが虫歯。
何より神経をとった歯は、寿命が短くなり、予後が悪くなる場合もかなりある。
日本における根管治療(神経の治療)の成功率は5割を切るとされている。
不当なまでに保険点数が安く、やればやるほど赤字になるのが根管治療のため、まともに取り組む歯科医が少ないのが現状。
だから、小さなうちに、さっさと虫歯を治してしまうの一番賢い。

今回は、まだ大丈夫だろう、と判断しがちな虫歯の症例を紹介する。

大臼歯の虫歯

40代男性。
多数歯のカリエス(虫歯)の治療後、定期的なメンテナンスに移行していた患者である。
最近、裂溝(歯の溝)に探針が入るようになった。
痛みやしみるといった症状は皆無。

問題の大臼歯
スポットカリエス

拡大したもの
スポットカリエス強拡大

う蝕の状況

見た目は黒い着色程度。
症状もなく、見えない上顎の大臼歯部ゆえ、検診でも受けていなければ、まず気づくことはない。
麻酔下で入り口を広げる。
やはり、内部は大きい。

入り口を開削したもの。内部で広がっている。
象牙質で広がっていた虫歯

歯は表層を硬いエナメル質で守られているが、もし一点を突破されてしまえば、比較的柔らかい内部の象牙質はいとも簡単に食い荒らされてしまうからだ。
表面からは、針の先ほどの穴の虫歯に見えて、内部はほぼからっぽで、神経に達する虫歯は非常に多い。

治療状況

内部に広がった虫歯は、黒くはなくても虫歯になっている場合がある。
一見虫歯を取りきったように見えても、う蝕検知液で確認すれば、染まる。
半年前に虫歯の治療をしたのに、もう再発した、というパターンは、ほぼ間違いなく取り残し。
まず巷の歯科医は、う蝕検知液を使わないが、私はほぼ100%使用して取り残しを防いでいる。(詳しくはこちら

まだ虫歯は残っている
う蝕検知液で反応

う蝕検知液で反応が無くなるまで、スチールバーで除去する。
う蝕は大きく、入り口の小ささからは想像もできないサイズなのがわかるかと思う。

う蝕検知液で反応しなくなり、虫歯を取りきったことを確認
虫歯を取りきった

臼歯部での咬合面の治療は、グラスアイオノマーセメントのフジナイン。
収縮がなく、自己接着性があり、フッ素徐放性を有するため二次う蝕になりにくい。
レジンは重合収縮のため、窩洞との間に目に見えない隙間ができ、二次う蝕のリスクが高い。
ただし、フジナインは操作が煩雑で手間がかかる。

フジナインで充填、治療終了
フジナイン充填

続きます