知覚過敏は厄介な疾患だ。
冷たいものや、物理的刺激などで鋭敏に痛みを感じ、程度によっては歯を磨くのでさえ、はばかられるほどだ。
当院にも月に何人もの患者が、知覚過敏を主訴に来院される。
症状は軽いものだと、冷たいものにピリッとした痛みを感じる程度。
重症化すると、甘いものや温かいものにも反応するようになり、歯髄の神経が刺激に耐えられなくなり、常時ズキズキと痛み出す歯髄炎にまで至ることさえある。
そうなってしまうと、神経が残せない場合すらある。
痛みの場所の感覚は、虫歯と違って割とあいまい。
歯の痛覚を伝える神経は元々一本で、顎の奥で分岐し、上顎・下顎それぞれに入っていく。
そのため、上が痛くても、下が原因だったりと所在がはっきりしないことがある。
ただし、顔面の正中をまたいで左右の感覚が狂うことはない。
知覚過敏の原因は、歯の象牙質の露出。
通常の歯は、歯ぐきより上は硬くて白いエナメル質に包まれ、守られている。
外側から、硬くて割れやすいエナメル質、しなやかだがやや硬度の劣る象牙質、そしてさらに中には神経や血管のある歯髄がある。
歯の構造
通常であれば、象牙質は外界に直接さらされることはない。
ところが、硬いガラスが割れるように、エナメル質が欠けてしまい、象牙質が露出することがある。
また、歯周病により歯槽骨が吸収され、それに伴い歯ぐきが後退すると、歯ぐきに覆われていた象牙質が露出する。
他にも、歯の摩耗やう蝕でも象牙質が露出することもある。
象牙質の露出
象牙質には、目に見えない無数の象牙細管と呼ばれる構造があり、歯髄方向に向かっている。
細菌の侵入はできないほどの細い構造であるが、中には水が入っていると考えられており、その歯髄側には神経終末が入りこんでいる。
象牙細管のイメージ図
象牙質が直接外界にさらされている表面には、象牙細管が開口している。
そしてその開口部に冷水などが接触すると、象牙細管内の水が収縮し、これが細管末端の神経終末を刺激し、痛覚として感じる。
これが知覚過敏のメカニズムと考えられており、動水力学説という。
他にも、妊娠時などにおける歯の知覚の亢進、ホワイトニング時の薬剤の影響なども知覚過敏の原因となる。
知覚過敏・動水力学説のメカニズムイメージ
虫歯に侵されたわけでもない歯が痛いわけで、通常の虫歯治療では治せない。
では、どのように治療すれば良いのか。