手荒れと歯の疾患が関係あることをご存じだろうか。
人間の免疫反応は複雑だ。
手荒れの原因が思ってもみなかったところにある場合がある。

掌蹠膿疱症という皮膚疾患がある。
主に手のひらや足の裏の指紋がある部位に発生する慢性の疾患。
具体的には、まずは直径1~2ミリ程度の小水疱が多数形成される。
この小水疱ができた部位はかゆい、つぶすと透明のリンパ様の液体がでる。
ちなみにこの小水疱は無菌性なのが特徴。
その後数日以内に、皮膚表面の皮がボロボロめくれ、薄くなった皮膚は出血などをおこす。
このような症状が繰り返される。
ステロイド軟こうで一時的に寛解するが、再び発症する。
実に厄介な疾患。
移ったりはしないが、非常なコンプレックスになる。

実はこの疾患、私が二十歳前後で苦しんだ疾患。
人に手を見せるのが嫌で、当時つきあってた女性と手をつなぐのも勇気がいった。
皮膚科に通い続けたが、一向に良くならない。
多感なころとあって、ずいぶん悩んだものだ。

さて、掌蹠膿疱症の原因であるが、正式には不明となっている。
だが、扁桃炎、副鼻腔炎、根尖病巣、中耳炎などの慢性炎症がある場合に有意に発症することが分かっている。
つまり、歯科においては根尖病巣、慢性歯周炎など。

私は子供のころの不摂生で、右上7番が根尖病巣を形成していた。
高校生の頃、虫歯を放置して不顕性に神経が壊死し、細菌侵入していたため。
二十歳のころ意を決して歯医者に行き、感染根管治療をおこなった。
その後、数か月後には掌蹠膿疱症は消失した。
あれだけ苦しんだ掌蹠膿疱症、その後は一度たりとも発症していない。

発症の機序を推測してみる。
いまだ誰も解明していないのだから、推測の域を出ないが、当たらずとも遠からずだと思う。
慢性炎症の結果、病巣付近のマクロファージから前炎症性サイトカインTNF-αあたりが放出される。
これが全身に回ることで、糖尿病におけるグルコトランスポーター4(GLUT4)の生合成阻害など様々な問題を引き起こす。詳しくはこちら
このように前炎症性のサイトカインが、手のひらなどの遠位の部位で炎症を惹起していると考えれば整合性がとれる。
証拠に、掌蹠膿疱症は無菌性であるが、水泡周囲に炎症を伴うため。
つまり、原因はないのに炎症はある。
ということはどこからか炎症を誘導する因子が流入していると考えれば、つじつまが合う。
今後の生化学における解明が待たれる。

掌蹠膿疱症は慢性炎症以外にも、発症する原因があるようだが、それが何かは今は不明。
しかしながら慢性炎症が原因の場合、根本的に治療することで治る。
発症する部位を治すのではなく、原因となる部位の治療。
もし掌蹠膿疱症でお悩みであれば、まずは体のどこかの慢性炎症を疑うとよいだろう。
もし、歯ぐきの出血など、歯周病の症状等があれば、歯科に相談することをお勧めする。
何度でもいうが、口腔内領域とて、全身の一部なのだ。

手荒れと歯の意外な関係 完