あぶないプッチン

プッチンプリンの魅力は、間違いなくプッチンにあるといえるだろう。
それを逆手にとった商品が、去年グリコから発売されていた。
何とプッチンがひとつのプリンに、4つもあるという夢のような商品。
3つはダミーで、どれか一つが当りだという。

実は、歯にもプッチンがあることがある。
問題は、プッチンしてしまうと、えらいことになること。

中心結節の破折

20代前半女性。
右下第二小臼歯の痛みを主訴に来院。
口腔内は非常にきれいで、虫歯になるような衛生状況ではない。
咬合面をよく見ると、探針が入る穴が開いている。
虫歯でもないのに、なぜこんなことになったのか。

中心結節とは

歯の異常形態で、中心結節というのがある。
下顎の小臼歯部に好発し、咬合面の中心の裂溝部に1~2ミリの高さに突き出た突起である。
蒙古斑同様、モンゴロイドの特徴とされている。

第一、第二小臼歯両方に中心結節があるレアケース
中心結節

通常の歯牙であれば、神経は咬合面から距離をとって存在する。
ところが、中心結節のある歯牙は、中心結節に向かって神経が突出している。
つまり、中心結節が何らかの理由で折れたり、すり減ってしまうと、神経が露出する可能性がある。
今回のケースは、食事か何かで、プッチンである中心結節が折れてしまったのである。

中心結節のある歯の構造。結節に向かって神経も突出する
中心結節のイメージ

折れてしまったことで、神経が歯髄炎をおこして痛みをおこした。
ところが、気づかず、神経が死んでしまう場合がある。
そうなると、根尖に病巣が形成され、治療は長引いて大変になる。
長引くだけならまだしも、代謝を失ってもろくなった歯が、咬合圧に負けて破折し、抜歯の憂き目に至ったケースもあった。

治療

神経が露出した時点で、神経の保存は難しい。
つまり、根管治療と、全側性(咬合面を全て覆う)の補綴が必須となる。
虫歯でもなかった歯が、いきなり金属などのかぶせ物になってしまうわけだ。

中心結節破折の対策

厄介な中心結節であるが、破折を予防することはできないのであろうか。
最も簡単な予防法として、レジンで結節周囲をガチガチに固めてしまう。
とりあえず、プッチンさせないという非常にシンプルな方法。

咬耗(すり減り)していく分には、二次象牙質が根管内面に添加されていくことで、神経は徐々に結節から距離をとっていく場合が多い。
ただし、ブラキシズム(歯ぎしり)などによる急激な咬耗には、追従しきれず露髄してしまう場合もある。

いずれの場合も、中心結節の存在を認識しておくことが前提となる。
歯科医院での受診と、破折の要因があれば適時つぶしておくことが重要である。
歯の咬合面に、何か突起があるな、と気づかれた方は、一度歯科医院の門を叩いてほしい。

中心結節 完