歯の発育異常

歯は外層から、エナメル質・象牙質・そして神経の納まる歯髄からなる。
そのでき方は、歯胚と呼ばれる歯の種にあたるものができ、その後分化してエナメル器となる。
その後、形態分化期に歯の構造が決定され基質が形成される、その後石灰化することで硬化していく。
この時期に何らかの障害がおこると、歯の発育異常がおこる。

歯の発育が良くわかるパノラマ写真抜粋
歯の発育過程

エナメル質形成不全

エナメル質形成不全は大きく二つに分類される。

エナメル質減形成

エナメル質の基質形成が障害されると、エナメル質の一部もしくは全部が少なくなる。
そのため、内部の象牙質の黄色っぽい色調を呈する。

エナメル質石灰化不全

エナメル質の基質形成後の石灰化時期に障害を受けることで起きる。
石灰化が十分におこなわれていないため、硬度が低く咬耗しやすい。
透明感のない白濁気味の色調を呈する。

乳歯のエナメル質減形成
乳歯のエナメル質減形成

永久歯のエナメル質減形成
永久歯のエナメル質減形成

エナメル質形成不全の原因

原因は主に全身性のものと、局所性のものに分類される。

局所的な原因

局所的な形成阻害がおこることで起きる。
阻害がおきた部位のみでおこるため、左右対称におこらないのが特徴。

外傷性

乳歯が打撲などで外傷を受けた場合、代生歯に形成不全や形態異常がおこる場合がある。

炎症性

乳歯に根尖性の歯周炎がおこった場合、代生歯の形成が阻害されておこる。
ターナー歯と呼ばれ、エナメル質の部分欠損、形態異常、全欠損などがおこる。
象牙質には影響しない場合がほとんどである。

全身的な原因

全身的な問題で形成阻害がおこる場合がある。
この場合は、エナメル質の形成がおこっている歯牙が同時に障害される。
そのため左右対称におこる。

乳歯

乳歯の歯の発生は、妊娠6週ごろから始まる。
そのため、母体の栄養不良、病気といった全身状態が乳歯の形成に影響する。
特に妊娠初期の風疹感染は、歯牙のみならず催奇形性が高い。
早産も高頻度で形成不全が発生する。

永久歯

永久歯のエナメル質の形成期に、栄養不良・病気。代謝障害などがおこることでおこる。
また、過剰なフッ素摂取によるフッ素中毒が原因でも起こる。

MIH

MIH(molar incisor hypomineralization)は切歯と大臼歯に限局して発症するエナメル質減形成である。
原因は不明。
日本では軽度なものも含めると11%の発症率である。

重度(重症度3)のMHIの口腔内写真・前歯部
MIH前歯部

臼歯部
MIH臼歯部

治療

エナメル質は無機質である石灰化成分により、歯の防御を担っている。
そのためエナメル質の形成不全は、歯が虫歯になりやすく咬耗しやすい。
そのため、フッ素塗布によるハイドロキシアパタイトのフルオロ化が有効。

乳児ではフッ素塗布しても、唾液が多く流されてしまうので、フッ素含有グラスアイオノマーのフジナインを塗り付けることが良い。
唾液の存在下でも硬化し、その後はがれてしまっても、フッ素移行は期待できるとされている。
治療の協力が得られる年齢ならば、通常のフッ素塗布で良い。

永久歯の場合も、フッ素塗布、臼歯部はシーラント充填が有効。
実質欠損が多い場合は、レジン等で歯冠形態をとり、成人後はセラミックなどで被覆冠にすることが良いだろう。

エナメル質形成不全 完