乳歯の特殊性
乳歯は永久歯と、形態や化学的組成において大きく異なる。
そのため、乳歯は虫歯になりやすく、進行も早い。
このような点から、小児の歯科治療や予防は大人とは全く違うものになる。
さらに永久歯に取って代わられることを考えると、その妨げにならないようにしなくてはならない。
今回は、乳歯の特殊性や、その治療法について解説する。
乳歯の特徴
化学的特性
乳歯は永久歯と化学的な組成からして異なる。
歯牙を構成する無機質であるハイドロキシアパタイトの割合が、永久歯のエナメル質では97%ほどなのに対し、乳歯では70~80%ほどにすぎない。
ハイドロキシアパタイトは食物などに含まれるフッ素により置換され、う蝕に強いフルオロアパタイトになるが、当然その割合も比例して低くなっている。
そのため、乳歯は非常に酸などに弱く、虫歯になりやすい。
私の体感的には、虫歯が進行するスピードは大人の10倍くらい。
永久歯が2年くらいかけてなる虫歯が、乳歯ではわずか3か月もしないうちになってしまう。
生活習慣や解剖学的特性も含めたうえでの話であるが、化学的組成も大きな要因になっているのは確かである。
解剖学的特性
乳歯は永久歯と形態が全く異なる。
本数において、永久歯が28本なのに対して20本(親知らずを除く)。
大人の小臼歯の位置に、乳臼歯が位置する。
乳歯に小臼歯に該当するものはない。
エナメル質は薄く、永久歯が黄色がかっているのに対して青白い色を呈する。
永久歯の萌出スペースを確保するため、乳臼歯は前後方向に長いが咬合面は小さい。
つまり、基底近くに最大の豊隆が存在する。
内部の神経が納まっている髄腔は大きく、虫歯や歯科治療によって露髄しやすい。
また、乳臼歯では髄腔直下に根管様の開口がみられる場合がある。
永久歯の歯胚が歯牙下方にできてくるため、歯根は湾曲し根管は扁平な傾向にある。
乳歯のレントゲン像・特徴的な形態と永久歯の歯胚が見てとれる
これらの解剖学的特徴は、歯牙のう蝕治療が困難な原因となっている。
特に根管治療は、小児の歯科への順応の低さと併せて難易度が高い。
永久歯と同じような治療は難しく、予後が悪くなる場合が避けれない場合もある。
続きます