タバコが原因の口内炎

近年、本邦におけるタバコの習慣が激変している。
従来型の燃焼式タバコ(いわゆる紙巻きたばこ)から、アイコスなどの加熱式タバコへのシフトがすすんでいるためだ。
また、電子タバコといわれる、メンソールなどの香りのフレーバーに、個人輸入で手に入る液体ニコチンを加えるものも普及がすすんでいる。

これらの新型のタバコ装置のメリットは、タールや臭いを出さないこと。
タールは発ガン性のかたまりのようなもので、燃焼式タバコはタールによって肺にニコチンを運んでいたが、新型のタバコ装置は代わりにグリセリンを使用している。
グリセリンは多くの食品・薬品・化粧品などに使用され、安全性が高い。
今後、肺がんなどの呼吸器疾患が激減することが期待できる。

さて、このような新型のタバコ装置の普及は歓迎されるべきことだが、燃焼式からの切り替え直後に、ニコチン性口内炎が頻発する事態に、遭遇することが多くなった。

加熱式タバコのglo
加熱式タバコ

ニコチンとは

そもそもニコチンは、植物がつくりだすアルカロイドであり、毒物である。
植物が虫害を防ぐためにつくりだす物質であるためだ。
人間の体への作用としては、βエンドルフィンの生成を促すことで、抗不安作用をもたらす。
身体依存性はあるが、精神依存性はみられない。
身体的には、末梢の血管を収縮させる作用を持つ。(初めてタバコを吸った人が、くらくらするのは、脳血管が収縮するため)

ニコチン性口内炎

ニコチンは口腔粘膜に刺激性を持つ。
単体ではさほど刺激はないものの、粘膜に傷があったり、局所にタバコの熱傷があったりすると、口内炎をおこすことがある。
特に新型のタバコの吸いはじめに多いのは、吸い口の形状が燃焼式と異なるため、特定部位にグリセリン加熱蒸気が集中するためだと思われる。
さらに血管収縮作用のため、障害部への血流が不足し、創傷治癒が遅延することも一因である。

症状

口内炎の性状は、普通の口内炎とは異なる。
出現は、加熱蒸気が集中する部位におこる。
歯槽粘膜に発赤が出現し、赤い針先ほどの出血点が多数出現したり、発赤した粘膜が白く変化したりする。
唾液腺の開口部に現れたりすることも多い。
喫煙を控えると治るが、特にやめなくてもいつかは治る。

タバコが口内炎を治す、の都市伝説

タバコを吸うと口内炎が治るという話がある。
これは、ニコチン酸がビタミンB群の複合体であることからきた勘違い。
チョコラBBなどのビタミンBは口内炎に効くとされている。
ところが、ニコチンはニコチン酸とは別物。
タバコを吸ってニコチンを摂取しても、口内炎は治ろうはずもない。
なお、最近では、ビタミンB自体、口内炎への効果は疑わしいとされている。

ニコチン性口内炎 完