血が止まらない
抜歯後、血がなかなか止まらなくて心配した経験のある方も多いだろう。
歯科とは言え、医療系、抜歯や手術で出血をきたすことは良くあること。
今回から、出血に関して取り上げていく。
止血の仕組み
出血がおこり、血が止まる仕組みは2段階に分かれている。
そして極めて複雑なメカニズムを経て血が止まるのであるが、わかりやすいよう大雑把に説明する。
一次止血
血管が破れると、まずはアドレナリンにより末梢血管が収縮し、血管への血流が制限される。
血管の壁を構成する血管内皮細胞がはがれると、その下の膠原繊維が露出する。
すると、フォン・ヴィレブランド因子(VW因子)を介して、血小板が膠原繊維と接着する。
すると、血小板は活性化され、ほかの血小板を集める因子を放出し、多くの血小板が集積して、血小板血栓という凝集塊を作り出す。
これにより、とりあえずの止血がおこる。
これを、一次止血という。
一次止血のイメージ図
二次止血
一次止血は迅速だが、いまいち強固さに欠ける。
そこで血液凝固因子が次々に連鎖反応をおこし、フィブリノゲンがフィブリンという繊維状タンパク質を構成する。
この連鎖反応は血液凝固カスケードと呼ばれ、複雑な反応のため、国家試験の頻出領域となっている。
さらにフィブリンはカルシウムイオンの存在下で不溶性の、フィブリンポリマーという重合体になり、網状になり血小板血栓を覆って強化する。
これが二次止血で、凝固血栓(フィブリン血栓)という。
これにより、血管壁の修復の準備がか完了する。
二次止血のイメージ図
三次止血
血管の修復がおこなわれると、フィブリン血栓はもはや無用の長物。
どころか、血栓が流れていった先で梗塞などをおこし、有害ですらある。
そこで、人体には血栓を溶かしてしまう仕組みが備わっている。
プラスミンというタンパク質分解酵素は、フィブリンと結合し、分解がすすめられる。
この一連の仕組みを線溶系といい、修復後の血栓溶解過程を、三次止血という。
出血傾向とは
出血傾向は、これらの止血のメカニズムが破綻、もしくは薬などで人為的に阻害された状態。
様々な要因があり、抜歯後の止血を難しくしている。
続きます