今年は、まだ5月だというのに暑い。
長期予報では猛暑になるようなことをいっていた。
例年、夏になると流行するのが手足口病である。
手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(プール熱)を子供の三大夏カゼとよぶ。
このうち、歯科領域でみられるのは手足口病とヘルパンギーナ。

手足口病は主に夏に、5歳以下の乳幼児に多く罹患するウイルス性の疾患。
初期症状として、発熱や咽頭痛があるが、高熱をだすことはあまりなく、発熱しないことも多い。
その後1日から3日ほどすると、手、足、口まわりに赤い水泡性の発疹がでてくる。
皮膚にできる発疹はたいてい痛みやかゆみを伴うことはない。
しかし、口腔内に多発的に形成される水泡は、つぶれた後口内炎様の潰瘍状態となる。
口腔内は、様々な刺激が加わるため、痛む。

手足口病はウイルス性の感染症。
主にコクサッキーウイルスA16がメインであるが、ほかにコクサッキーA6やA10、エンテロウイルス71も原因となる。
ほとんどの場合1週間から10日で自然治癒するが、エンテロウイルス71では非常にまれに悪化し中枢症状を呈することがある。
嘔吐や頭痛、けいれんといった中枢症状がでたら、すぐに有床の病院を受診すべき。
急性脳炎・髄膜炎の可能性があり、命にかかわる場合がある。

感染ルートは接触感染、飛沫感染。
幼稚園などで集団感染する。
予防法は手洗いを徹底すること。
熱に強く、アルコール消毒にも効果はない。

治療法であるが、特にない。
ワクチン等も特にはない。
ウイルス感染ゆえ、抗生剤は効かない。
ケナログなどの口内炎のステロイド治療薬は、免疫抑制剤のため、逆効果。
近くのインプラントセンターで、刺激を遮断する目的で塗布するよう処方していたようだが、いかがなものか。
口内炎様とは言っても、全くの別物なのだ。

ただし、アズノール系の軟膏やうがい薬は有効。
殺菌ではなく抗炎症作用がこの薬の主作用。
イソジンやネオステグリーンのような殺菌を目的としたうがい薬は、二次感染を防ぐ意味はあるが、常在菌の細菌叢を壊す可能性があるので注意が必要。
手足口病は、ほっとけば治る疾患。
安静にしているのが一番の治療法。

ただし、留意する点として、痛みのため摂食や給水が滞る場合がある。
手足口病においては、脱水症状にならないようにするのが最大の注意点。

似た夏風邪に、ヘルパンギーナがある。
コクサッキーウイルスが原因で、感染経路などもほとんど手足口病と同じ。
違いは、発疹が口腔内に限られることと、高熱が出ること。
対処、予防そのほかは手足口病に準ずる。

これからの季節、感染機会はピークを迎える。
だいたい一回はかかる疾患であるが、手洗い等はしっかりするようにしたい。