以前、テレビを見ていると、無許可アートメイクについての報道があった。
実はアートメイクは、れっきとした医療行為。
厚生労働省は2001年にアートメイクが医療の範疇に入ると見解を示し、2005年には正式に医師法の範疇に入れられた。
それゆえ、医師の指示のもと医療機関で医療行為としておこなわれなくてはならないもの。
一時期、無資格者の摘発が相次いだが、まだまだちまたでは横行しているようである。
番組の中で無資格者が耳を疑うような発言をしていた。
「アルコールできちんと消毒しているから安全ですよ」

アルコール消毒は、中水準の消毒行為。
全ての感染源の撲滅には程遠い。
例えば身近なところでは、ノロウイルスはアルコール消毒では不活化できない。

アートメイクで恐ろしいのは、B型肝炎(HBV)。
私たち歯医者は針刺し事故を極端に恐れる。
特に感染力が強いのはB型肝炎。
針刺し事故での感染率は、B型肝炎30%、c型肝炎(HCV)3%、エイズウイルス(HIV)0.3%とされている。
昔の歯医者はHBVの罹患率が高かった。
グローブを使わずに治療したうえ、今のように感染予防に対するガイドラインがなかったためだ。
アートメイクのように針で生体を刺すような行為は、HBV、HCVの感染を免れない。
針をアルコール消毒のみで使いまわすのは、感染拡大をほう助する犯罪行為に等しい。

では、感染源を根絶するにはどうすれば良いのだろうか。
消毒、殺菌、滅菌という言葉がある。

殺菌は、広く消毒・滅菌を含む。
一部の細菌などを殺しただけでも殺菌といえるため、程度を表す用語とは言えない。

消毒は対象とする微生物を感染が成立しないレベルにまで減少させること。
ひとつの消毒法では効果のない微生物もある。
アルコールはこの消毒レベル。

滅菌は文字通り全ての微生物、ウイルスなどの感染性の要素を抹殺すること。
菌類の一部や芽胞と呼ばれる微生物の形態は、煮沸程度では死なない。
微生物全てに有効なのは以下の4つ。
高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)、グルタルアルデヒド、エチレンオキサイド、次亜塩素酸ナトリウム。
このような高度滅菌の機器の保有や、感染症予防の正しい知識とその実践は医療関係者以外行いえない。
アートメイクが医療の範疇にいれられるのは当然の判断。

しかしながら、機器は滅菌できても患者や医療関係者自体を滅菌はできない。
そこで、感染に対する予防策が標準化されている。

続きます