小さく厄介な病原体

最小の微生物

マイコプラズマは世界最小の微生物。
大型のウイルスよりも小さい。
細菌ろ過装置すら、すり抜ける。

一応細菌の範疇に組み込まれてはいるが、細菌の特徴である細胞壁をもたない。
細胞壁どころか、普通の細菌が備えている最小限の細胞小器官すら欠落している。
そのため、細胞に寄生して必要な物質を取り込んで増殖する。
ただし、ウイルスのように細胞を改造して自己を複製するのではなく、培地に必要な条件を組み込めば培養可能。
これが、ぎりぎり細菌である根拠となっているが、実態はウイルスと細菌の中間くらいの微生物とされている。

極めて簡素なマイコプラズマの構造、細胞壁すらももたない
マイコプラズマの構造

北大歯学部の細菌学の柴田教授(歯学部バレー部の顧問でもあった)が、マイコプラズマ学会に所属していて、30人ほどの団体という話を門下生に聞いたことがあった。
当時は何とも奇妙な学会があるものだ、と思っていたが、今となっては、なかなかマイコプラズマは奥が深い。
はまってしまえば、どこまでも探究熱が上がっていきそうな研究対象である。

若い人の呼吸器疾患

ありふれた感染症

マイコプラズマは、成人までに97%の人が感染する病原体。
一回だけでなく、何度もかかることがある。
極めてありふれた感染症といって良い。
かつてはオリンピック開催の年に流行することが多かったため、オリンピック熱と呼ばれていた。
最近はその法則が崩れがちなため、呼ばれなくなった。

感染力はそこまで強くはないが、飛沫感染や接触感染でうつり、2~3週間の潜伏期を経て発症する。
学校単位で流行することがある。

症状

症状は、最初は発熱・頭痛・倦怠感といった症状からはじまり、徐々に乾性の(タンのからまない)咳が出始め、解熱後も咳はひどくなり、1カ月程度湿性の(タンのからむ)咳が続くことが多い。
最近のマイコプラズマ感染は、吐き気、下痢などの消化器症状を伴うタイプが多くなっている傾向がある。

合併症としては、中耳炎・鼓膜炎・筋肉痛・発疹などのほか、肝炎・脳炎・膵炎・心筋炎、中枢神経症状ほか非常に多岐にわたる。

経過

2~3日で治る人もいれば、1カ月以上症状が続く人もいる。
成人までに97%という数字は、大人への通過儀礼といって良い数字だ。
ただし、感染者の1割は肺炎に移行する。

続きます