糖質を考える・砂糖

「砂糖は神様」
これは大学時代、とある授業のタイトル。
砂糖がいかにして虫歯の原因となるかの授業であった。
世に砂糖があるからこそ、虫歯が生まれ、歯科医が食っていけるということからこのタイトルになった。
この授業は、タイトルがタイトルだけに、印刷物は配られず板書をノートに書き写すのみであった。

砂糖は多くはサトウキビからつくられるが、北国ではサトウキビは発育が難しく、代わりにビート(砂糖大根)からつくられる。
北大時代、北海道のスーパーで売られている砂糖は当たり前のようにビート糖であった。
私もスズラン印のビート糖を使っていた記憶がある。
キビ砂糖もビート糖も精製されており、違いはない。
この真っ白に精製された砂糖こそが、もっともう蝕をおこしやすい。

ビート糖

ビート糖

授業のタイトルにあった通り、砂糖はう蝕(虫歯)誘発能において、完璧である。
そもそも虫歯がどのような条件で発生しやすいか。
糖類はそのまま歯を溶かして虫歯をつくるのではない。
細菌が糖類を利用してできた代謝産物が、虫歯をつくる。

砂糖は正式にはショ糖といい、ブドウ糖と果糖が結合したもの。
体内ではそれぞれに分解されて、果糖も最終的にはブドウ糖に変えられ利用される。
口腔内では細菌により酸に分解され、歯の石灰質の流出である脱灰をおこす。
しかし、世の中には酸性の飲料・食物(梅干しなど)がたくさんある。
なぜそのようなものでなく、砂糖が虫歯の原因となるのか。

通常、酸が口腔内に入っても、唾液には緩衝作用といい、適度なPHに保つ仕組みがある。
これは、唾液に重炭酸塩が含まれているため。
だから、酸性に傾いた口腔内は重炭酸塩により中性付近に引き戻される。
つまり、酸だけであれば、脱灰がおこっている時間はそんなには長くない。
もちろん、あまり過剰な酸への接触は問題であるが。

ところが、砂糖から代謝されるものはもう一つある。
それが、歯垢。
正式には不溶性グルカン、別名を菌体外多糖体。
これは粘り気のある物質で、水に溶けないため、うがいによる除去はできない。
不溶性グルカンと細菌が一緒になったものが歯垢というわけ。

歯垢がある状況で砂糖の摂取がおこなわれると、ただちに歯垢中の細菌により酸の酸性がおこなわれる。
そして産生された酸は歯垢中にとどまるため、唾液による緩衝作用が届きにくい。
これが、砂糖が高いう蝕誘発能を持つ理由である。

 ← 砂糖  不溶性グルカン(歯垢)

口腔内に微生物がいるだけでは、虫歯はなかなかできない。
歯垢という細菌の接着剤があればこそ、細菌が局所的にとどまり続け、虫歯を作り出す。
とくに歯垢が除去しにくい、歯の溝や、歯の間が虫歯になるのはこのような訳があるのだ。

続きます