ありふれた厄介者

今年は過去最高の、インフルエンザの流行であるという。
当院のスタッフも、みんなワクチンを打っているにもかかわらず、罹患者が出た。
医療機関たる場所で、患者にうつすことがあってはあってはならない。
そういうわけで、1週間お休みいただいた。
私はタミフルとリレンザを常備しており、怪しいときはすぐ服用するようにしている。

さて、ウイルスはインフルエンザのように強病原体のものばかりではない。
むしろ、感染しても、かぜ程度の症状であったり、不顕性感染といって、全く無症状に経過する場合の方が多い。
今回は、そのようなウイルスの代表格であるヘルペスウイルスについて解説する。

ヘルペスウイルスとは

ヘルペスウイルスとは、二本鎖DNAを持ち、球状の外殻(カプシドやエンベロープ)を持つ200nm程度の大きさのウイルスの総称。
だからヘルペスといっても、帯状疱疹ウイルス(VZV)や鯉ヘルペスウイルスなど、種類はそれこそ山のようにある。

単純にヘルペスと呼んでいるものは、これらのうちの、単純ヘルペスウイルスというウイルスが引き起こす疱疹のこと。
単純ヘルペスには、2種類ある。

単純ヘルペス1型

歯科領域におこるのが、単純ヘルペス1型(HSV-1)。
上半身に症状があらわれやすく、特に口唇に症状がでる。
頻度は比較的低いが、他にも口内炎、角膜炎などの症状がある。

感染は、キスや食器の使い回しなどでおこる。
近年では、感染している若い人の割合が低下気味だが、それでも二十歳で40%ほど。
60代ともなれば、ほとんどの人が感染しているといわれる。

多くの初回感染は、症状の無い不顕性感染であるが、症状が出ると結構激しい場合が多い。
発熱したり、口唇や口腔内に口内炎やびらんといった症状が出る。

問題は、ヘルペスウイルスは体内から駆逐できないこと。
三叉神経節の細胞内にじっとひそみ、普段はおとなしくしている。
ところが、病気や疲労で体力が低下すると、ここぞとばかりに暴れだす。
これが、再発。

再発すると、神経節をでて所属神経をたどり、水泡を形成、ピリピリとした痛みを出す。
神経節に潜むため、同じ神経の支配領域である同か所に水泡が繰り返される。
ただし、一応抗体はつくられているため、初回感染ほど症状はひどくはない。

口唇ヘルペスの再発症例
口唇ヘルペス

治療

外用の抗ウイルス薬の塗布が一般的。
特に何もしなくても、体力が回復すれば自然に治る。
治るとはいっても、ウイルスが無くなるわけではなく、また何かあれば発症するのが悩みどころ。
いなしながら終生付き合っていかねばならないのが、再発性の口唇ヘルペスである。

続きます