歯冠補綴物の構造
かぶせもの(クラウン)のその下は
生活歯の場合
虫歯などで歯を削った場合、その範囲が大きければ、かぶせものにしなくてはならない。
神経の残せた歯であれば、虫歯の領域を埋め戻したうえで、かぶせものをはめ込めるように形を整えたうえで、型取りをする。
取った型をもとに、技工士が口腔外でかぶせものを作成、できたものを歯科医がセットする、というのが一連の治療の流れ。
生活歯の歯冠補綴物
失活歯の場合
虫歯が神経までも侵し、根管治療(歯の根の治療)をおこなった歯の場合は、同じかぶせものをするにしても構造が全く異なる。
もろくなる失活歯
神経の生きている歯(生活歯)の場合、歯の内部には神経のほかに、血管なども走行している。
そして歯の内部から、歯を造っては壊すといった代謝がおこなわれ、歯は常に生まれ変わっている。
ところが、神経を失った歯(失活歯)には、そのような代謝が失われてしまっている。
代謝が失われると、どうなるのか。
失活歯はいわば枯れ木のようなもの。
生活歯は生きているので、生木のように折ろうと思っても、簡単には折れることはない。
ところが、枯れ木が簡単に折れるように、失活歯ももろくなってしまっている。
そのため、力のかかり具合によっては、破折する。
そして多くの場合、割れる方向は神経の走行に沿って縦に破折し、一撃で保存不可能になってしまう。
運が良ければ、一生割れることはない。
しかし割れるときは、年齢に関係なく割れてしまう。
失活歯の補綴
強度に劣る失活歯を活かすには、補強する必要がある。
補強には二つの要素がある。
ひとつは、歯の芯になるコア。
鉄筋コンクリートでいうところの、鉄筋にあたる。
この歯の土台となるコアを、失活した歯に構築することを、支台築造という。
そして、もうひとつの要素が、クラウン。
芯を入れただけでは、芯が逆にくさびとなって歯を壊してしまう恐れがある。
歯を包み込むように、バチンと桶のタガのように締め上げてしまうのだ。
かつては、コアとクラウンは一体型となっており、差し歯と呼ばれていた。
しかし、今はクラウンとコアの二階建て。
クラウンとコアそれぞれに適した材料を使うことができるし、コアを残してクラウンだけを作り直すことができる。
何かと合理的にできるわけである。
失活歯の歯冠補綴
ところが、当院の周囲の歯医者では、この最低限の補強処置ができていないところがある。
破折して、保存不能になった歯は抜歯せざるをえない。
歯科医のモラルを疑わざるを得ない。
続きます。