季節の変わり目に多い症状
今年はずいぶんひどい気候の年だった。
猛暑に大雨、台風に秋の長雨と、落ち着く暇がないくらい。
ようやく明日から秋らしくなるという。
すると、この時期に発症する症状がある。
耳の前が痛いと来院する患者が、どっと増加するのだ。
顎関節症
特殊な関節
顎の関節は、特殊な関節。
二つの関節がそれぞれに独立した動きをしながらひとつの骨格を運動させる、唯一の関節。
最大開口時には、関節窩からはずれているという不思議な関節でもある。(いわゆる「顎がはずれた」は、元の関節窩に戻らなくなった状態)
複雑な動きに加えて、顎の運動はとにかく回数が多く、咬むためにかかる力も強い。
そのため、関節窩の軟骨組織や骨組織は、変形などの器質変化をおこしやすい。
加齢によるひざの軟骨の障害などは、比較的高齢になってからおこるが、顎の関節は歯並びなどの咬合によっても影響を受けるため、若年でも起こる。
それにより、時として顎の関節は様々な症状をきたす。
症状
顎関節の不具合は、普段は鳴りを潜めている場合がある。
ところが、顎の関節に負担がかかりすぎると、症状が出る。
開口障害・耳の前に位置する顎関節の痛み・頭痛・耳の前のクリック音など。
ひどい場合には、食事や会話などもままならない場合がある。
顎関節症の発症
顎関節症が発症する時期。
これは圧倒的に10月から11月が多い。
これは、急に寒くなることで、薄い寝具を利用していた場合、食いしばるためだ。
睡眠時の食いしばりは、有害な反射が次の反射を引き起こすことで、おきているときとは比べ物にならないくらいの力を出す。
人にもよるが、ひどい場合だと普段の30倍にも及ぶことがあるという。
このような異常な力に顎関節は耐えられない。
かくして、顎関節症が発症に至る。
対策と治療
対策
対策は、一枚多く着て寝ること。
これだけで全然違ってくる。
他には、普段から顎に負担をかけないこと。
固いものを一度に大量に食べたり、頬杖をつくのは結構な負担。
顎関節症の既往がある人はこれだけでも再発したりする。
治療
顎関節症の治療は、外科手術などの根本治療は基本的におこなわない。
症状が出た時に、対症療法で対応するのがセオリー。
ただし、咬合に問題がある場合は、全顎的な補綴をおこなうこともある。
対症療法としてよくおこなうのは、Nsaid(消炎鎮痛剤)の一定期間の投与など。
ロキソニンなどはこの範疇に入る。
症状が長く続くと、関節内の関節液内に炎症性の因子が放出され、粘貼性が上がりさらに症状が悪化しやすくなるため。
痛みをとるのはもちろんだが、消炎という作用に重きをおく。
また、再発を防止するのにナイトガード(マウスピース)を装着して寝るのもよくおこなう。
人間は、食事の際に小さな石でも入っていたら、噛んだ瞬間それ以上噛まないような反射がある。
ナイトガードを異物と認識させることで、それ以上噛まないようにするのがその原理。
ただし、ナイトガードがあると余計に噛んでしまう人もあり、一概に効果があるとは言えない。
食いしばり対策に用いるナイトガード(ソフトタイプ)
まとめ
これからの季節は、いろいろな症状が出やすい季節。
顎関節症のみならず、ちょっとした気候変化にも人間は敏感に反応する。
くれぐれも、寒さ対策は怠らぬよう。
耳の前が痛い 完