口内炎は誰もがかかったことがあるであろう、普遍的な口腔疾患。
場所によっては痛くて食事もままならない時がある。
口内炎のできるメカニズムにはいくつかの種類がある。
ひとつは、カタル性口内炎、単純口内炎ともいう。
唇をかんだりといった機械的刺激などからおこる口内炎で、赤い炎症像を示す。
境界は不明瞭で広範囲におこることもある。
痛みはアフタ性口内炎ほどではなく、ひりひりした痛み。
アフタ性口内炎に移行することもある。
ウイルス性口内炎は、文字どうりウイルスが原因の口内炎。
主な原因ウイルスは、帯状疱疹ウイルス(VZV)、麻疹ウイルス、手足口病(コクサッキーウイルス等)などがあるが、特に単純ヘルペスウイルス(HHV)によるものが多い。
HHVは弱いウイルスではあるが、一度感染すると体内に潜伏し続ける。
成人の約7割が感染しているといわれ、接触感染するので要注意。
歯磨きのコップをわけるといったことで予防できる。
体力低下時などに、日和見に再発する。
アフタ性口内炎は、白く境界明瞭なクレーター状の炎症。
通常、口内炎と呼ばれているものはこれを指す。
粘膜に傷などがあり、細菌感染をおこしたりすることでできる。
痛みは強いが、1~2週間で治る。
再発を繰り返す場合は、再発性アフタといい、自己免疫疾患であるベーチェット病などを疑う。
他の口内炎としては、カンジダによるもの、アレルギーによるもの、癌治療の放射線によるものなどがある。
基本的に口内炎の治療は対症療法である。
痛みの緩和と、二次感染を防ぐことでさらなる悪化を防ぐことを目的とする。
歯科医院でおこなう処置は、口内炎を焼いてしまうこと。
レーザーなどが用いられる。
当院では裏技的に、小児のう蝕進行止めのサホライドを使う。
サホライドの成分はフッ化ジアミン銀という成分で、強力な殺菌力がある。
これを口内炎につけることで、化学的に焼いてしまう。
ただし、痛い、とんでもなく。
荒療治とはこのことを言うのかと思うほど。
ただし、治りはとても早い。
私を含め、患者にも一定数の信者がいる。
サホライド
一昔前には、通称バイオレットという薬があった。
歯科用ではなく、産婦人科で女性器の褥瘡の治療に使う薬。
強力な殺菌作用があり、これが良く効いた。
バイオレットは正式名クリスタルバイオレット。
クリスタルバイオレットは細菌のグラム染色に使う試薬でもある。
細胞内部に浸透する性質があり、発がん性があるので使われなくなってしまった。
レーザー、サホライド、バイオレットいずれも使ってみたが、効果は体感的に
バイオレット > サホライド > レーザー
の感じがあった。
医院以外の処置として、ステロイド剤の軟こうの塗布がある。
ケナログやオルテクサーなどがこれにあたる。
患部をティッシュなどで乾かして、覆うように塗ると、唾液でふやけて刺激を遮断してくれる。
デキサルチンは少々唾液で流れやすい。
食前食後に塗布することで、刺激の遮断と治癒促進に効果がある。
ただしカンジダ性口内炎には逆効果、免疫抑制剤であるステロイドがカンジダ菌の増殖を促してしまう。
ウイルス性口内炎にも同様の注意が必要。
オルテクサー軟膏
薬局で売っているシール状のものも刺激の遮断効果が高い。
やはりこれもステロイド系。
製品名アフタッチなど。
うがい薬としてはアズノールなど、アズレンスルホン酸ナトリウムの入ったうがい薬が良い。
アズノールは、殺菌をメインにしたうがい薬と違い、抗炎症作用を主作用とした薬品。
薬局でもアズレンうがい薬として購入できる。
あらゆる口内炎に使用が可能。
以前はビタミン不足が口内炎の原因とされてきた。
ところがよく口内炎に効くとされる、チョコラBBなどのビタミン剤は、最近では効果が疑問視されている。
気休め程度に服用する程度で良いと思われる。
口内炎は通常2週間ほどで治る。
それ以上の期間治らなければ、別の疾患を疑う必要がある。
近くの口腔外科医などを受診すると良いだろう。
口内炎の治療 完