なぜ、金属で治すのか

虫歯を除去した後に詰める銀歯。
部位によっては目立つため、できることなら避けたい。
そのように考える方は多いと思う。

それは、歯科医とて同じ。
特に現在のように、歯科用合金が高騰しているとなおさら。
現在、何と30グラム約44000円もする。
時価なら問題ないのだが、歯科用金属の保険価格の改定は半年に一度。
改定時より2割も上昇しているため、利益の極めて薄い保険治療はボランティアのようになっている。

では、なぜ双方に嬉しくない金属治療をおこなうのだろうか。

接点の回復

歯の咬合面(上面)が虫歯になった場合は、神経が侵されてなければ、比較的問題は少ない。
虫歯を削り取って、白いレジンか、高強度グラスアイオノマーで、自身の歯と同じように治療できる。
これらの詰め物は、その場で硬化する性質があり、即時充填材料と呼ばれる。

ところが、虫歯の好発部位のひとつに、隣在歯との接点がある。
糸ようじなどを使わないと、歯垢が落とせないためだ。
そして、ここが虫歯になった時が厄介。

接点の虫歯を削って、即時充填材料を詰めて、研磨すると、歯と歯の間がスカスカになってしまう。
そうなると、食べ物が詰まりやすくなり、詰まった食べ物がくさびのように歯を押し広げるような役目をする。
無理な力がかかった歯は、歯を支える歯周組織にダメージを与え、歯周病の起点となってしまう。
もともと歯周病のあった人は、あっという間に悪化する。
それゆえ、接点の回復が非常に重要。

隣接面の治療

隣接面との接点のすきま(コンタクトという)を適切な強さに回復するには、型取りをして、口腔外で詰め物を作成する必要がある。
きつめに作っておいて、口腔内で調整して適度な当たり具合にする。

この時に使用する材料は、ある程度の強度が必要。
金属・セラミック・ハイブリッドレジンなどが使用される。
保険のレジンインレーもあるにはあるが、強度が圧倒的に弱くすぐ破断するため、当院に限らず臨床で用いられるのは稀。
実質保険では、金属一択となる。

歯間分離器を用いて充填するやり方では、即時充填材料のコンポジットレジンでも適度な回復が可能だが、時間が非常にかかるため自費となる。
それであれば、セラミックなどを選択したほうが予後は良好。

例外的な治療

コンタクト回復を目指す治療であるが、例外的に即時充填材料でできる場合がある。
隣の歯を、かぶせ物で治療したとき。
真横からアプローチできるためだ。

仮着しておいたクラウンをはずす
仮着したクラウン

虫歯が見える
コンタクトの虫歯

虫歯を除去
虫歯除去

コンポジットレジンで修復、後は通常通りクラウンをセットするだけ
レジン充填

治療は、計画が大事。
上手く治療順序を組み立てれば、金属の治療か所を減らすことができる。