骨にもコブができる
骨にできものができたんですが、ガンじゃないでしょうか。
年に一回ぐらいは、このような質問に会う。
診るとなるほど、あごの骨にコブのようなものがある。
実はこれは、骨が過剰に増殖してできた、骨のコブ。
それも何年も何十年も、すごく長い時間をかけて大きくなったもの。
いつもそこにあり、特に気にも留めてなかったものに、突然気づくとちょっとした騒ぎになることがある。
骨隆起とは
骨にできたコブは、骨隆起という。
非腫瘍性の、皮質骨の過形成である。
上顎の口蓋にできたものを、口蓋隆起。
下顎にできたものを、下顎隆起という。
巨大な口蓋隆起
舌側の下顎隆起
頬側の下顎隆起
良性の骨種の一種であり、外骨症ともいう。
上顎では成人の2割ほどにみられ、下顎では1割ほど。
いずれも女性の方が男性の約二倍の頻度でみられる。
特に病的な存在ではない。
原因
詳しい機序はわかってはいないが、遺伝性とも、炎症反応性とも、荷重のかかるところにできやすいともされている。
とくに歯ぎしりや強い咬合力のかかるところに、加齢という要因と併せて発生する傾向が強い。
障害
骨隆起を被覆する粘膜組織は薄く、ちょっとしたことで傷つきやすい。
そのため、入れ歯による褥瘡や、やけどといった外傷の好発部位となる。
上顎に大きく発達した口蓋隆起は、物理的な大きさにより、構音障害や接触の障害をもたらす。
治療
通常、積極的に治療をおこなうことはない。
ただし、義歯の装着などで邪魔になってしまう場合は別。
特に上顎の口蓋部は、総義歯の吸着を得るために被覆される部位である。
保険の入れ歯などでは、この部分を覆うレジン床の厚みは数ミリに達する。
もともとある口蓋隆起に数ミリ以上のレジンが覆いかぶさると、発音に障害をもたらす。
このような障害が出る場合は、口腔外科などで除去してもらう必要がある。
麻酔下で、外科用のノミとマレット(つち)を使い、落とすのが一般的。
小さなものであれば、ハンドピースで削り飛ばす場合もある。
総論
骨隆起は、取り立てて気にする必要はない。
病的なものではないので、放っておいても大丈夫だからだ。
ただし、義歯の装着においては障害となりうる。
そのため、骨隆起がある場合は、義歯にならぬよう歯牙の喪失を可能な限り防ぐことが重要。
そのためには、日々の歯の手入れと、定期的に歯科医院で歯石の除去等を行い、歯周病を進行させないようにする。
歯が無くなって、義歯になれば、骨隆起は結構な割合で患者を苦しめるからだ。
骨隆起 完