虫歯菌は感染症

どんなに歯を磨かなくても、虫歯にならない人がいる。
全くもってうらやましい限りであるが、このような人ばかりでも私は困る。
歯医者の存在意義がなくなってしまうから、という非常に個人的な事情。

同期のI君が、まさにこのタイプであった。
先端恐怖症なのに歯医者になった変わり種の彼は、現在虫歯を治すことなく歯科矯正の治療をしている。
今回は、口腔内の細菌の感染の話。

虫歯菌の棲む環境

虫歯菌は、その宿主たる動物が、虫歯菌の餌となる糖類を摂取するものにしかいない。
果物などを食料とする動物には虫歯菌はいて、肉食動物にはいない。
肉食動物は虫歯にはならないのだ。

さらに、虫歯菌が住み着くには、歯が必要。
歯が無くなった老人や、歯が生えていない赤ちゃんには住み着けない。
いったん住み着かれたら追い出すことはほぼ不可能であるが、なかなかシビアな環境で生きているのだ。

人に住む虫歯菌は、Streptococcus mutansという、通称ミュータンス菌。
虫歯菌は動物ごとに異なり、人間の虫歯菌は他の動物には住み着けない。
「人には人の乳酸菌」というCMがあるが、人には人の虫歯菌があるわけである。
これは、長い年月をかけて人に対応して進化してきた結果といえる。

ミュータンス菌はいつ感染する?

ミュータンス菌はもともとは体にいない菌。
そして住み着くには、歯が必要。
それゆえ、感染は歯が生えてくる時期。
それもある程度の歯が増えてきた18か月から、3歳くらいまでが感染が多いとされる時期。

この時期は砂糖を用いた食物を食べ始める時期というのも大きな要因。
砂糖は虫歯にかかわる細菌にとっては完全食。
歯垢の産生から、酸の産生までオールインワンに利用できる非常に好都合な物質。

この時期をこえると、口腔内の細菌叢の完成や、免疫系の発達により感染しても、口腔内に常在が難しくなる。

予防するには

感染しやすい時期に、周囲の人間からの細菌を遮断することが重要となる。
まず、周囲の人間は、歯磨きを徹底して細菌自体を減らすこと。
歯垢があるということは、細菌のかたまりがあるということだからだ。

そして、口移しで食べ物を与えないこと。
スプーンや食器を変えればなお良いともいうし、そこまで神経質になる必要はないともいわれる。
あと、言うまでもなく歯ブラシの共有は厳禁。
とにかく口から口への接触を避けるのが基本である。

スプーンの共有はできれば避けたい。
口移し

感染しても

感染が成立しても、必ずしも虫歯になるわけではない。
きちんと歯磨きをして、ミュータンス菌の棲みづらい環境にすれば、そうそう虫歯にはならない。
とはいえ、できれば感染しないにこしたことはない。
お子様が生まれたら、できれば感染予防を考えられてはいかがだろうか。

赤ちゃんと虫歯菌 完