脱インプラントからの回答

不安定な下顎の入れ歯。
インプラント固定式入れ歯の問題点。
もはや、おいしく物を食べれる入れ歯はないのか。
その答えこそが、下顎吸着義歯。

吸い付く入れ歯

上顎の入れ歯は口蓋を覆うことにより、吸着を得ることができる。
吸盤と同じく、空気を遮断して義歯内部に入れない構造となっているからである。
対して、通常の下顎総義歯は、舌や下顎の小帯部など、空気が侵入する要素が多く、吸着できない。

これを、特殊な印象や、辺縁封鎖を用いて、空気の侵入を遮断し、吸い付かせるのが下顎吸着義歯。
食事や会話などでも、ずれることはない。
ただし、作製に長い時間が必要で、保険外の治療となる。
難しい症例であれば、10時間近くを要する場合すらある。

作成手順

詳しくは、企業秘密のため書けないが、要点だけ列記する。

一次印象

まずは通常の入れ歯の作成と同様の型取りをおこなう。
これにより、通常の入れ歯同様の床装置を作成する。
この段階では、保険の入れ歯同様の、雑な構造。
これを用いて、入れ歯の辺縁を加減し、空気の漏れないラインを決定していく。

外縁決定

特殊なプラスチックを入れ歯の外縁に添加していくのであるが、これが最も時間を要する。
普段は舌や軟組織に埋もれているところまで、必要がある部位に関してはのばしていく。
経験を最も要する作業。
見えない部分の骨や筋肉、軟組織の構造を熟知していないとできない。

咬合採得

床外縁を決定したら、床装置を用いて高さと顎位を決定する。
高さはある程度許容範囲が大きいが、水平方向のずれは1ミリもあったら大変になる。
もともと下顎歯列が全て失われている症例である、顎位が不安定になっている場合が多い。
これを上手く誘導して、あるべき位置に持ってくるのが、腕の見せ所。
どれだけ真剣に入れ歯をつくってきたか、経験がものをいう。

二次印象

床外縁・咬合高径が決定したら、床装置をそのまま用いて印象する。
床装置内面に、シリコン印象材を入れて精密印象をおこなう。
これにより、通常の印象では絶対に手の届かないところまで、正確に印象することができる。

保険義歯に準じた印象から作成した模型。
保険義歯模型

上の模型と同一人物の、吸着義歯用の精密印象から作成した模型。分かりにくいが、印象の深さは倍近い。
吸着義歯模型

義歯作成

印象が終わって、咬合器上に模型をセットすれば、できたも同然。
あとは、入れ歯の構造を決定するだけ。
唇や頬粘膜の圧力なども考慮して、外縁や豊隆(ふくらみ)の形状をつくりこんでいく。
入れ歯のうえに、隙間なく粘膜などの軟組織がのっかるようにして、空気の侵入を防ぐようにする。

完成した義歯

このような手順で作成された義歯は、通常のものとは形状が異なる。
ひとりひとりの口腔内にあわせて、細かく設計されているためである。
義歯は、手で引っ張ったぐらいでは、外れることはない。

一見何の変哲もない義歯にみえるが
吸着義歯内面

引っ張ったぐらいではびくともしない
吸着試験

総論

下顎の義歯は、インプラントなどを用いることなく、吸着固定できる。
吸着した入れ歯は、インプラント固定式入れ歯同様の食事を楽しむことが可能。

インプラントのように、手入れは無用。
食事が終われば、口をゆすぐだけ。
インプラントにつきもののリスクは無縁である。
コストも、インプラント固定式義歯の半額以下に抑えられる。

この技術を手に入れたことが、私がインプラントを脱却できた理由のひとつであることは、間違いない。
ただし、下顎骨の残存状況次第では、十分な吸着が得られない場合もある。
そのような場合では、インプラントも埋入不可能なので、実質入れ歯以外の選択肢はない。

この技術は、誰もが持っているわけではない。
実は、歯医者にこの入れ歯をいれたことがある。
東大阪市の某有名歯科医院のOBである。
私には絶対に無理ですとのお言葉をいただいた。
この近辺では、唯一無二の技術であると自負している。