薬局に行くと、多くの洗口剤が売り出されている。
一昔前までは、GUMデンタルリンスぐらいしかなかったが、ここ数年で何十種類にも増えた。
CMでも歯周病ケアと謳っていろいろ宣伝されている。
さて、このような製品はどの程度効果があるのか。
実はうがいでは、歯周病は治せない。
治せないどころか、歯垢の除去も全くできない。
歯垢は細菌がつくりだす、自己を守るバリア。
バイオフィルムという。
ショ糖(砂糖の成分)などを原料に細菌はいろいろなものを作り出す。
ひとつは酸、これによって歯は溶かされ虫歯となる。
そしてもう一つは不溶性グルカン。
これは文字通り水に溶けることのないねばねばとしたもの。
これにより細菌は水に流されることなく、その場で繁殖し続けることができる。
また、洗口剤の殺菌成分はバイオフィルムを突破することができない。
それどころか、抗生物質すら通過は難しい。
バイオフィルムを形成した細菌を抗生剤で倒すには、なんと通常の最少発育阻止濃度の約千倍もの濃度が必要。
それゆえ、心臓でバイオフィルムを形成した疾患である感染性心内膜炎は抗生剤のみで治すのは全くの不可能。
外科処置が必要となる。
そのような強固なバイオフィルムを除去するのは洗口剤では役不足。
そもそも洗口液は歯周ポケットに到達するのでさえ困難。
歯垢は機械的に除去するために、歯ブラシで磨くしかない。
結局のところ、歯垢はうがいで落とせない、歯ブラシによる除去が必要。
そして歯石は、歯ブラシでは除去が不能、歯科医院で専門の道具(スケーラー)での除去が必要。
要するに洗口剤の役割は、歯周ポケットの外の唾液中に遊離している細菌を減らすだけのものなのだ。
だから歯磨きの代わりに洗口剤というのは気休めにしかならない。
洗口剤を使うから、歯磨きは適当にというのも当然ダメである。
では全く効果がないかといえば、使い方次第。
例えば誤嚥の多くなる65歳以上の高齢者では、お休み前に洗口液で細菌を減らすことには意味がある。
高齢者の肺炎の原因の9割は、口腔内の細菌が誤嚥により気道内へ侵入することが原因。
もし誤嚥しても、細菌が少なければリスクは減少する。
もちろん、歯磨きがきちんとおこなわれていることが前提であるが。
洗口剤が多く売り出されて、お口の中に関心が向くのはおおいに結構だと思う。
ただし、ちまたの情報に惑わされず、正しい口腔ケアをおこなうように心掛けてほしい。
洗口剤の有効性 完