今回は、いよいよ本命ともいうべき、ペニシリン系。
抗菌薬の代名詞といってよく、この薬の出現が感染症治療を劇的に変えた。
セフェム系同様、βラクタム環を持つ抗菌薬。

ペニシリンGはバイオアベイラビリティが悪いが、改良したアモキシシリンは、90%以上の吸収率を誇る。
プロドラッグといい、体内に吸収されてから代謝を受け、狙いの抗菌薬に変化する。
血中濃度も高く、この点で第三世代セフェムとは比べ物にならない。
そして殺菌力は、セフェムに比べても、ずっと強力。
抗菌スペクトルは狭く、グラム陽性菌に強い殺菌力を持つ。

ペニシリンは、耐性菌が問題になっている抗菌薬。
構造の一部であるβラクタム環を破壊する、βラクタマーゼを分泌する菌が増えてきたため。
それに対抗して、βラクタマーゼ阻害薬を配合したペニシリン系抗菌薬も開発されている。(ユナシンなど)
しかしながら、全く効かないというわけではない。
効きにくい特定の細菌がいる、というだけでそれがいつの間にか、ペニシリンは効かないという話になってしまっただけのこと。

それでは歯科の適応の主たる細菌に対する抗菌剤の耐性をみていこう

➀Streptococcus Anginosus 属 (グラム陽性連鎖球菌)
➁Peptostreptococcus 属 (嫌気性グラム陽性球菌)
➂Prevotella 属 (嫌気性グラム陰性桿菌)
➃Fusobacterium 属 (嫌気性グラム陰性桿菌)

ペニシリン系は➀➁➃の細菌に耐性菌はない。
しかもグラム陽性菌の➀➁には強烈に効く。
耐性化が顕著なのは➂のPrevotella属、実に50%近くが耐性菌。
グラム陰性桿菌はPrevotella属に限らず、大腸菌などはペニシリンに対する耐性はほぼ100%。
これがペニシリンが効かないといわれているゆえん。

しかし、➂のPrevotella属はなにもペニシリンだけが耐性を獲得されているわけではない。
薬にもよるが、第三世代セフェムですらすでに20%以上が耐性を獲得されてしまっている。
グラム陰性桿菌は多くがβラクタマーゼを分泌する耐性菌化がすすんでいるためである。

したがって、口腔領域に限って言えば、➀➁➃の細菌にはペニシリンが著効。
➂のPrevotella属であれば、効く確率は50%ほど。
つまり、➂のPrevotella属をうまくカバーできれば、ペニシリンはスペクトルも狭く強力ゆえ適切な抗菌薬といえる。

続きます