第一世代セフェムは、グラム陽性菌に強い殺菌力を持つ。
日本にあるのはセファキシレンとセファクロル。
古い薬というだけで、耐性菌うんぬんと敬遠するドクターが多いが、グラム陽性菌がターゲットであれば効果は第三世代を上回る。
その上、バイオアベイラビリティも非常に良い。
グラム陽性菌が多い口腔領域では、第一選択として悪くはない。
母乳への移行がわずかで、授乳中の投薬は海外の文献でも最も安全性が高いとされる。
ただし、緑色連鎖球菌群への殺菌力は弱いので、感染性心内膜炎への予防投与には不向きである。

第二世代は経口薬の歯科適用はセフロキシム(製品名オラセフ)のみ。
グラム陽性菌に強い抗菌力を持つが、ほかが弱い。
血中半減期が短めで、薬剤として中途半端な印象がある。
特に優先して使用する抗菌薬ではないだろう。

カルバペネムも、βラクタム系抗菌薬の一種。
歯科の経口適用はファロペネム(ファロム)のみ。
βラクタムのなかで、緑膿菌までカバーする、格段に広いスペクトルを持つ抗菌薬である。
スペクトルが広いだけでなく、殺菌力も強力。
ただし、マイコプラズマ、レジオネラ菌、MRSA、クラミジアには感受性がない。

「とりあえずカルバペネム」という言葉が、薬理をよくわかっていないドクターを象徴する文句となった。
広くて強力ということで、特に医科での乱用が大問題になっている。
医科における、歯科でいうところのマクロライドのようなものか。
乱用がたたって、カルバペネム耐性腸球菌(CRE)が出現してしまい、院内感染で多くの死者を出している。
そのため、阪大でも神戸大でも使用制限をかけている。

この薬の正しい使用法は、生きるか死ぬかの超重症感染症。
細菌を特定しているヒマが無いようなときに、血中にガツンと投与する。
スペクトルが広くて強力な抗菌薬の正しい使い方は本来このようなものなのだ。

続きます