白血病の治療
前回は、白血病の症状とその発症機序について説明した。
今回は、治療法についてざっくり説明する。
ガン化して無限増殖能を獲得した白血病細胞は、ガン同様体の中から残らず駆逐する必要がある。
ところが、ガンなら、腫瘍の領域を残らず切除すればよいが、白血病細胞ではそうはいかない。
白血病細胞は体中の血液をへて、全身に浸潤しているためである。
そのため、白血病細胞をたたくのは、化学療法や放射線に頼ることになる。
白血病の悪性度
白血病といっても、様々な種類があり、悪性度は一人一人違う。
正常な細胞が遺伝子レベルで変異しておこるのが白血病であり、変異のポイントや程度は千差万別だからである。
未分化の正常な造血幹細胞が、正常な細胞に分化して血液はできる。
正常な細胞に近いほど、分化は高度であり、悪性度は低い。
対して、分化の程度が低く、正常な細胞からかけ離れているほど、悪性度は高い。
この悪性度によって、治療の難易度や予後が左右される。
実際には悪性度の判定には、国際予後判定システムというもので判定をおこなう。
項目としては、染色体の異常度、白血病細胞・各血球の割合を点数化し、総合的な点数で評価して、悪性度は決定される。
悪性度に応じた治療
白血病の治療は、白血病細胞のみをたたくというような薬剤はいまだ存在しない。
そのため、自身の正常な細胞も少なからず影響を受ける。
そのため、悪性度の度合いに応じて、治療のレベルを決定する。
実際には、軽い治療からはじめ、徐々にレベルを上げていく場合が多い。
化学療法
最初におこなわれるのが、抗がん剤であるシタラビンと、アントラサイクリン系を組み合わせておこなう。
投薬は点滴でおこない、通常1クール1週間。
ただし、これは患者の状態により変わる。
寛解が得られなければ、もう1クールおこない、それでも効果がなければ、シタラビンを増量する療法をおこなう。
寛解が得られれば、残っているかもしれない白血病細胞をたたくため、シタラビンを大量に投与する。(地固め療法という)
後述する移植治療がおこなえない場合は、基本的に化学療法が中心となる。
造血幹細胞移植療法
化学療法で思うような効果が得られない時は、造血幹細胞の移植をおこなう。
放射線や、強い抗がん剤を用い、体の中から、正常な造血幹細胞もろとも、白血病細胞を根絶してしまう。
それでは、血がつくられなくなってしまうので、自分の冷凍しておいた造血幹細胞や、ドナーからの造血幹細胞を移植する。
移植のための治療の副作用は、とても大変
移植には、ドナーと白血球の型が一致する必要がある。
兄弟間でも、一致する確率は4分の1。
赤の他人だと、数百~数万分の1にまで確率が低下する。
骨髄バンクができて、約9割の人に適合者が見つかるようになったものの、ドナーの負担も大きく、実際は移植できるには6割ほどだという。
なお、65歳以上の高齢者については、移植治療は適用外となる。
白血病まとめ
白血病の治療は、技術の進歩により、多くの人が助かる病になった。
しかし、白血病の悪性度や、ドナーの不在などにより、やはりむなしい結果となることがある。
すこしでも、この現状を変えるため、より多くの人にドナー登録をおこなってもらいたい。