悲劇のバレンタイン

バレンタインデーは、多くの男性にとっては憂鬱なイベント。
私はもはやそんなものに期待する年齢ではないが、チョコレート自体が苦手なので、妻からの去年のチョコがまだ残っている始末。
せめて、ウイスキーでも贈るイベントなら良かったのにと、思っている。

さて、街がバレンタイン気分で浮かれているこの時分、大変なことがおきたらしい。
西日本一のビル、あべのハルカスのバレンタイフェアの会場で、はしかの集団感染がおこった。
女性5人と男性2人が、感染したという。
うち2人は、近鉄上本町から応援に来ていた店員とのこと。

多くの人が来店する百貨店の店員が感染。
さらなる拡大がおこっても不思議ではない。

はしかとは

はしかは、正式な疾患名を麻疹(ましん)という。
麻疹ウイルスによる、感染症である。

症状

麻疹ウイルスに感染後、潜伏期は約10日。

その後は、カタル期と呼ばれる、風邪のような症状を呈する。
麻疹に特徴的なカタル症状は、せき・鼻水・結膜炎
熱はそこまで高くなく、38度程度。
これが、3~4日続き、カタル期後半に口腔内に症状が出る。
これが、コプリック斑、奥歯あたりの頬の内側に、1ミリほどの少し盛り上がった白斑がでる。
私は見たことがないが、コプリック斑ははしかにおいての確定診断の根拠となる。

その後、半日ほど熱が下がり、その後発疹期に入る。
通常顔面や耳の後ろから発疹がはじまり、赤い発疹が全身に広がっていく。
いったん下がっていた熱は再び上昇し、40度近くにまで達する。
せきや鼻水はひどくなり、口腔粘膜が荒れて痛みを出す。
この状態が、3日ほど続く。

治療は、対症療法のみ。
詳しいはしかの解説は、こちら

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はしかの感染力

はしかの恐ろしいところは、その爆発的な感染力。
インフルエンザや風疹などでは、飛沫感染といい、くしゃみなどのしぶきなどが飛散して感染する。

ところが、麻疹ウイルスは空気感染。
飛沫核と呼ばれる5㎛未満の微粒子が、空中を漂い、それを取り込むことで感染する。
感染しても症状を出さない不顕性感染はなく、免疫が無ければ100%発症する。

同じ体育館に感染者がいると、高率で感染が成立するほど。
免疫の無い人が、患者と接触があれば、ほぼ確実に感染する。
感染力は発疹発現前のカタル期が最高で、症状が治まってきても2日ほどはウイルスの放出は続く。
通常のマスク(私たちが診療で使うサージカルマスク)は用をなさず、感染を防ぐにはN95グレードのマスクが必要。

総論

はしかは最近では、日本では海外からの持ち込みによる株の流行が中心である。
問題は、はしかの予防接種が任意であった世代と、1回法がおこなわれていた世代が、麻疹ウイルスに対する免疫を持っていない可能性があることである。
これは、2005年より前に生まれた世代が、はしかの大流行に襲われかねないということ。
大人のはしかの予防接種は任意で費用がかかるが、できるだけ受けておくことが望ましい。

今回のはしかの流行であるが、池田市の保健所がはしかの通達を控えるよう箕面市立病院に指導したり、何かと問題が多い。
ハルカスで感染した患者は2月3日から10日の間に勤務している。
潜伏期間は約10日、そろそろ感染が拡大していれば、発症してくる時期である。
パンデミックに至らないことを祈らずにはおられない。

はしかの感染力 完