歯の色合わせ

以前歯の色合わせで苦労した症例(詳しくはこちら)。
上の前歯は、一本をのぞいてメタルボンド(陶歯)になった。

この一本がくせ者で、レジン充填されているうえ、色が暗い。
恐らく数年後には要補綴になると思われる。

最初はその暗いものにあわせたのだが、せっかくやりかえるので白めが良いとのこと。
最終的に数年後やりかえる時がくるまで、色の濃い天然歯はこのままでいくことにした。

ところが、やはり何とかして、他と目立たなくしたい言ってきた。

一本だけ目立つ
目立つ天然歯

色を白くする方法

色を変えるのにはいくつか方法がある。
基本的にできるだけ侵襲を少なくなるように治療法は選択される。

詰め物などがなければ、ホワイトニングが第一選択。
それに次ぐのは、歯の表層を削ってセラミックの薄片を張り付けるラミネートべニア。
すでにつめてある詰め物が大きかったり、神経がなければ、セラミッククラウンが妥当。

今回の場合は、セラミッククラウンが選択されるべきなのだが、すでに少々予算過多。
少し時期をずらしたいので、歯に直接白いレジンを盛る修復を考えた。
しかし、削るのも面白くないので、最初は、患者の了承を得て歯のマニキュアであるビューティーコートを使うことにした。

ビューティーコート

ビューティーコートは私のいた医局の、北大第一保存科の開発した製品。
白くはなるが、残念ながら透明感に欠け、べたっとした印象になる。

ビューティーコート
ビューティーコート

樹脂の薄層が歯の表面に形成されるだけなので、いずれ剥がれ落ちる。
はがれるまでの期間は、長い人で数か月。
歯ぎしりなどがあると、即日脱落することすらある。

それゆえ、結婚式などピンポイントで使用することが多い。
なお、保険は効かず、自費治療となる。

施術

まずは残っている歯質に酸でエッチング処理。
目に見えないレベルの凹凸をつくることで、表面積を増やして、接着力をあげる。
この過程は、本来のビューティーコートのマニュアルにはない。

エッチング処理
エッチング処理

ついでおこなうのが、シラン処理。
これは、歯質の一部がコンポジットレジンに置き換わっているため。
レジンの90%以上が、フィラーと呼ばれる石英などの粉末。
これに化学的接着をおこなえるようにするため、ポーセレンプライマーでシラン化する。

ポーセレンプライマー
ポーセレンプライマー

シラン処理
シラン処理

コート剤と歯質を接着するのが、ボンディング。
要は、糊にあたる。
強力なレジン用を使用しようかと考えたが、患者が気に入らなかった時を考えて付属の弱いものを使用。

ビューティーコート付属のボンディング剤
ボンディング剤

いよいよコーティング。
コート剤を田の字型にだし、それをアプリケーターと呼ばれる先丸の道具で広げていく。
光硬化触媒が入っているため、ライトをはずした方が操作時間が増える。

コート剤を広げていく
コート処理

広げたコート剤を固めるのは、レジン充填などに使う光照射器。
20秒ほどで硬化する。

光照射
光照射

仕上げは付属のポイントや、シリコンポイントなどで、表層の未重合層を除去して、つや出しする。

表面の研磨
研磨

完成

白めのコート剤を薄めに使用することで、できるだけ違和感を少なくした。
そこそこ改善されている。

術後 その1
術後写真

術後 その2
術後 

術後は丸一日、カレーなどの色物は厳禁。
見事に着色してしまう。
さて、この施術、いつまでもつことだろう。

歯のマニキュアで色調改善 完