見た目の追求
50代前半女性。
絶対に入れ歯と思われたくないとのことで、紹介で遠方より来院。
相当数の歯が保存できずに抜歯となり、残った歯も感染根管処置が必要なものが多数あった。
保険外の補綴であったため、治療中は仮歯と仮義歯で咬合を維持しつつの治療となった。
全体的にセラミックを中心とした歯冠治療をおこなった。
歯冠補綴を完了した時点から、AIデンチャーの治療をおこなう。
歯冠補綴を完了した時点での歯牙残存状況
上顎の残存歯群
下顎の残存歯群
設計のポイント
この時点で欠損部位は、前方歯群にもかなりかかってきていて、通常の義歯であればクラスプ(金属バネ)が見えないように補綴することは不可能である。
見える部位にはAIデンチャーの樹脂のウイング(バネ)を用い、見えないところは薄く(0.2ミリ程度)強度に優れたウィロニウム性の金属プレートを広めに展開することで、徹底的に剛性を向上させる。
薄く広くすることで、快適性と剛性を確保し、さらに残存歯の根元に、歯車のようにピッタリと添わせることで水平方向の動揺を止める。
見た目だけでなく、快適性の重視と、食事の際に何でも不自由なく食べれるようにするためである。
必要なところにのみ樹脂を使用し、他は金属などを十分に用いて機能的に仕上げるのが私のやり方。
AIデンチャーと保険義歯比較
上顎のAIデンチャー
下顎のAIデンチャー
保険の義歯との比較・上顎(右側がAIデンチャー)
上顎は目立たない工夫をしながらも、金属部分はむしろ増えている。
剛性と快適性を狙った結果である。
保険の義歯との比較・下顎(左側がAIデンチャー)
下顎は舌側に広く精密に金属部分を沿わすことで、安定と残存歯の固定を得ている。
上下顎ともに、使用する金属は保険の材料よりはるかに薄く、強く、軽い。
入れ歯の固定能力は、歯牙への負担が軽くなったにも関わらず、はるかに向上している。
見た目の比較
仮義歯で目立っていたクラスプは、クリアのウイングを多用することで全く目立たなくなった。
保険の義歯装着の様子 バネが目立つ
AIデンチャー装着の様子
歯ぐきに違和感なくフィットしている
総論
見た目を重視しながら、機能性も徹底的に向上させることができた。
非常に高い満足を得ていただいた症例である。
見た目もさることながら、全く不自由ない食生活をおこなっていただいている。
私にとって、50歳台前半というのは、ぎりぎりインプラントを適用しても抵抗ない年齢。
しかし、インプラントの本数を考えると、相当のコストがかかるし、その後のケアも大変である。
AIデンチャーであれば、インプラントよりコストをおさえつつ、自身の歯ほどではないにしろ、ある程度の機能は保つことができる。
健康上の理由などで不安がある場合の代替法として、AIデンチャーは十分にその能力を有している。
見た目の追求 完