実習あれこれ 解剖実習
祝日などのお休みに書く北大シリーズ、久々の登場。
歯学部は理系学部。
ましてや医療系なので、多くの実習の授業がある。
今回からは、しばらく実習について書いていく。
解剖実習
医学部が解剖するのは有名であるが、実は歯学部も解剖をおこなう。
口腔内とて全身の一部であるし、手術もあるので当然全身の構造は知っておかねばならない。
2年生の前期から、座学で強烈に暗記内容の多い解剖学が始まる。
体内の主な骨・神経・筋肉・血管や解剖学的特徴の全てを、頭の中に叩き込む必要がある。
試験前の晩、泣きそうになりながら学部にこもって徹夜したのを覚えている。
2年後期になると、いよいよ一年に及ぶ解剖の始まりだ。
御献体のひみつ
解剖に用いる死体を、御献体と呼ぶ。
無縁仏などは全くなく、全て生前からの御遺志による善意のものだ。
高額バイトの都市伝説で、ホルマリンのプールに浮き上がった死体を沈めるというものがある。
あれは、全くの都市伝説。
人体がすっぽり入るサイズの大きな袋にホルマリンをいれて、その中に御献体がおさめられている。
解剖は大変だった
我々の解剖実習は、その日解剖する領域のテストから始まる。
内容も分からずに解剖するのは、御献体への冒涜に過ぎない。
解剖の教室は、普通に授業を受ける学部の5階にあった。
タイル貼りで、冬場はとても寒い。
今は医学部と共用のきれいな実習棟で、快適に解剖しているらしい。
最初の何日かは、皮膚をはいで、ひたすら脂肪の除去。
全身組織があらわになるまで、ひたすら作業が続く。
なかなか帰れない
組織の解剖は週二日の実習、午後からおこなわれるのだが、平気で夜9時を回ったりする。
実習班によっては日付をまたいだりしていた。
解剖学のチェックをする先生が、二人なので順番待ちも大変だった。
だから、私たち4人の実習班は、解剖学のカラー写真アトラスを頭に叩き込み、解剖に臨んだ。
完璧なチームワーク。
どこの班よりも早く目的の組織を見つけ出し、チェックを受ける。
だいたい私たちが一番最初に帰ることができた。
解剖あるある
解剖すると、食欲がなくなるというのは嘘。
長い時間何も食べれないから、おなかがすくし、隙あらばとにかく何か食べていた。
食べれるとき食べないと、いつ食べれるか分かったものではなかったからだ。
手にはグローブをしていても臭いが付く。
一言でいうと絵の具の臭い、御献体の防腐剤のホルマリンの臭いだ。
不思議なもので、すぐに慣れてしまった。
解剖が終わると
1年に及ぶ長い解剖実習が終わると、医療系学生合同で慰霊祭がおこなわれる。
御献体の提供者家族も参列し、当然、喪装。
非常に厳かな雰囲気だったのを覚えている。
帰りに謎の和菓子が配られた。
巨大な餃子のような形をした、カステラ生地の中に餡が入った代物。
何のことや分からなかったが、これは中華まんじゅうなる和菓子。
北海道では、葬式や法事のの引き出物で出されるものである。
大きくて、食べるのが大変だったのを覚えている。
謎の引き出物・中華まんじゅう(草太郎HPより転載)
解剖は学年が進むにつれ、そして歯科医師としての経歴がすすむにつれまた実習したいと思うようになる。
当時は大変に感じたが、今となっては、実際の体の構造を見るのは、見えないところの治療をするうえで非常に役に立つと思う。
解剖実習 完