根管形成

歯の根を清掃拡大し、根管充填剤を詰めれるような形態にすることを、根管形成という。
今回は根管形成についてみていく。

基本的な根管形成

根管長の測定

上部根管の拡大をおこなった歯は、正確に根管形成がおこなえるよう、根管の長さを測るところからはじまる。
これには、根管長測定器を用いる。
電気抵抗値を可視化することで、根尖の位置を探ることができるこの装置は、歯科治療に革命をもたらしたといって良い。
それまでは、歯の切削抵抗などの術者の手指感覚に頼っていた治療が、誰でも正確におこなえるようになった。

余談であるが、私はこの手指感覚による根尖の位置把握をマスターしている。
根尖部の壁面の0.03ミリの起伏を拾うことができる。
ただし、風邪を引いただけでも感覚が狂うくらいデリケート。

根管長測定器に接続した、細めのKファイルなどを挿入し根尖に向けてすすめていく。
根尖に到達すると、音とモニター画面で察知できる。
この位置で、ファイルの長さを記しておく。

根管長測定器と機械式の切削器具

根管長測定器

手用のファイル・左がHファイル、右がKファイル

KファイルとHファイル

根管の拡大

根管長が把握できたら、拡大である。
根管長から2ミリ以内のところより上部を、ファイルなどで拡大していく。
この2ミリ以内の残存部で、根管充填剤をストップさせる。
2ミリを超えると、急激に予後が悪くなる。
私は通常0.5ミリで形成する。

ファイルでの拡大は、先端0.6ミリ径以下では0.05ミリずつ拡大していく。
非常に地味で手間がかかる作業。
これを、非感染歯ではだいたい先端径0.6ミリ以上まで、感染歯では感染歯質を除去し、安全マージンをとれるところまで拡大する。
もちろん、歯牙によってこの値は異なる。
ファイルを逆回転した時の抵抗が、正回転とほぼ同じになればOK。

0.5ミリ径以下の細い根管形成に留める歯科医が多いが、根管の形態異常に追従できないケースが多く、予後は悪い。
切削抵抗は先端径0.5ミリを超えると急激に大きくなるので、数みてナンボの保険治療では十分に診きれないというところだろう。
だからこそ、可能な限りスムーズに治療をおこなうための、根管上部の形成が大事なのであるが。

根管形成のイメージ図

根管形成

 

湾曲根管の形成

通常のステンレスファイルは、大きく曲がらず、湾曲した根管には追従できない場合がある。
このような場合には、形状記憶合金を用いた、ニッケルチタンファイルを用いる。
手用と機械式の2種類を私は用いている。

ただし、切削能力は合金の特性上、非常に落ちる。
平たく言うと、切れ味が悪すぎるのだ。
とはいえ、このファイルのおかげでステンレスファイルではできなかった歯の治療ができる。

ニッケルチタンファイル

ニッケルチタンファイル

 

非常にしなやかだが、切削能力は劣る

しなやかなニッケルチタンファイル

根管形成の重要性

根管治療は、根管形成の精度に全てがかかっているといって良い。
これがきちんとできれば、歯の寿命は格段にのびる可能性が高い。
とはいえ、これが軽視されていることは、非常に残念である。

続きます