根管洗浄
根管洗浄の目的
根管形成した歯は、根管内部や根尖の先にある病巣等を無菌化・無症状化して根管を充填・封鎖する必要がある。
そのために、根管内部を洗浄する必要がある。
殺菌
根管治療、特に感染根管においては、根管内には細菌の侵入は避けられない。
これらを放置すれば、多くの場合根尖部に感染が生じてしまう。
そのため、根管内部の化学的な殺菌が不可欠となる。
有機物の溶解
根管には分岐部など、術者の機械的処置が及ばない部分が出てくる。
そこに神経の一部や血液などの有機物が残存すると、変性した有機物を体が異物とみなし、病巣が形成されることがある。
そのため、有機物溶解の能力を持つ洗浄剤で溶かしてしまう必要がある。
スミアの除去
また、根管形成の際には、ファイル等によるミクロな削片(スミア)ができてくる。
スミアには、形成時などに侵入した細菌や、歯牙由来の有機物も混入しているため除去が必要である。
根管の壁には顕微鏡下でしか観察できないような、細い象牙細管が外に向かって無数にのびている。
この象牙細管の開口部や、ファイルの届かない分岐には、スミアが詰まっている。
このスミアを除去するには機械的除去では逆効果で、化学的な手法によらねばならない。
根管洗浄の手法
膿や浸出液を含む、根管内部の汚染などをファイルなどで大まかに除去した後、シリンジと呼ばれる注射器のようなもので、根管内に根管洗浄液を送り込む。
洗浄後は、脱脂綿などで薬液は回収される。
場合によっては、超音波スケーラーの先端部を根管洗浄用のアタッチメントに換装し、洗浄液を満たした状態で振動させる。
超音波によって、ミクロな泡の発生と消滅が発生することで(キャビテーション効果という)圧力波が発生し、効果的な洗浄がおこなえる。難治性の感染根管治療で、自費治療での場合におこなわれることがある。
EDTA(左)と次亜塩素酸ナトリウム溶液(右) 手前は洗浄用のシリンジ
根管治療に用いる薬剤
次亜塩素酸ナトリウム溶液(ネオクリーナー)
強力な有機物溶解作用と、殺菌力を持つ根管洗浄の主力。
その溶解力は、プラスチック製のシリンジすら痛めてしまうほど。
過酸化水素水
過酸化水素水は、ネオクリーナーとの交互洗浄で、発泡をおこす。
その発泡作用により、根管内に残存したスミアを除去する。
日本のほとんどの大学病院などでは、ネオクリーナーと過酸化水素水の交互洗浄が採用されている。
当院では、硬く固着したスミアの除去で使用することがある。
欠点もある。
根管の外に漏れだした場合、気腫をおこしてしまうことがある。
一度気腫をおこすと、寛解には時間がかかることがあり、私はメインでは使用しない。
EDTA(エチレンジアミン四酢酸ナトリウム・エデト酸)
強力な無機質溶解作用を持ち、スミアを脱灰・溶解する。
海外では過酸化水素水にとってかわりつつあり、私もこれをメインに切り替えた。
ネオクリーナーとの交互洗浄で使用する。
欠点は、高額であること。
続きます