放射線の人体への影響
被ばくの形態
チェルノブイリ原発事故のあと、甲状腺ガンが多発したとの報告がある。
報告の信ぴょう性には諸説あるが、事実とするとこれは被ばくの形態が大きな要素を占めている。
外部被ばくと内部被ばく
外部被ばくとは、放射線の線源が、体外にある場合の被ばく。
レントゲン撮影は、この外部被ばくにあたる。
対して、体内に線源がある場合を内部被ばくという。
食物や飲料を通して体内に放射性物質が取り込まれた際におこる。
チェルノブイリ原発事故のあと、おこったのはこの内部被ばく。
福島原発事故の後の避難も、これを避けるのが目的。
原子力事故などで汚染の原因の主要三核種に、放射線同位体であるヨウ素131がある。(他にはセシウム137、セシウム134)
ヨウ素131は、核分裂生成物としてウランやプルトニウムから生成する。
困ったことにヨウ素は、体内で利用される元素であるのだ。
ヨウ素は体内に吸収され、甲状腺のホルモンであるチロキシンの材料として、甲状腺に集積する。
そのため、甲状腺では持続的に高線量の放射線を浴び続けることとなる。
これが、原子力関連事故で、甲状腺がんが増加するメカニズム。
ちなみに、チェルノブイリ原発事故では、甲状腺ガン以外のガンは増加していない。
これを防ぐために、放射線同位元素を含まないヨウ素製剤を投与する。
人体は、過剰なヨウ素を排出する。
これにより、体外に有害なヨウ素131を排出することができる。
安定ヨウ素製剤
歯科における被ばくは
歯科医院で受ける被ばくは、主にレントゲンによる外部被ばくである。
持続的な被ばくでないため、集積はない。
人体における放射線の単位
放射線の単位は、結構複雑。
放射線源が強くても、離れていれば受ける放射線量は少ない。
さらに、受ける放射線に対して、吸収される放射線量はさらに異なる。
まず、組織の種類などにかかわらず、1キログラムあたりに受けた平均エネルギーをGy(グレイ)という。
これは吸収線量。
受けた放射線の種類によって影響が異なるので、種類に応じた係数をかける。
これを放射線荷重係数といい、例えばX線は1、アルファ線は20といった荷重がある。
吸収線量にこの荷重係数と修正係数をかけたものが、線量当量。
これが良く聞くSv(シーベルト)である。
シーベルトは、生物学的効果を加味した吸収線量の単位である。
このシーベルトこそ、人体が受ける放射線量の指標となる。
続きます