睡眠時無呼吸症候群、車の運転中に墜落睡眠をおこし、事故が発生して一躍有名になった。
横綱白鳳関や、元阪神タイガースの亀山選手など、苦しめられたアスリートも多い。
体が充分に休養を獲れる状態でないので、パフォーマンスが著しく低下する。

症状としては、大きないびきの間に、十秒以上も無呼吸の状態が頻発する疾患である。
睡眠が知らず知らずのうちに阻害され、日中にだるさや眠気、疲労感を覚える。
合併症としては、高血圧が非常に多い。
呼吸停止のたびに、呼吸を再開するよう交感神経を介して指令が送られるため、交感神経優位の時間割合が高くなるためといわれている。
心筋梗塞や脳卒中のリスクも3~4倍高くなる。

病態としては 中枢からの呼吸の指令がないタイプのものと、気道閉塞で呼吸が止まるタイプのものの2種にわけられる。
前者は全体の数パーセントにとどまり、おもに睡眠時無呼吸症候群といえば後者を指すことが多い。
本編も気道閉塞の睡眠時無呼吸症候群についての解説となる。

閉塞性の睡眠時無呼吸症候群の原因で最も多いのが、肥満。
睡眠中は顎や舌が後退する、そのため気道を閉塞してしまい無呼吸を誘発する。
舌がそれ自体の重みで下がってしまうことを、舌根沈下という。
肥満は舌本体も太らせてしまい、気道閉塞のリスクをあげてしまう。

副次的な要因として、日本人の顎が小さくなってきたことも大きい。
近年、日本人の顔はエラを張ったような顔貌は減り、シュッとした小さな顎が増えてきた。
舌は決して顎より前にはいかない、小さ目の顎が相対的に舌の位置を後方に下げてしまうことが、睡眠時無呼吸症候群のひとつのリスクファクターとなる。
余談であるが、知り合いの麻酔科のドクターが、アンガールズの山根さんをみると不快になるらしい。
曰く、顎が小さいため、気道挿管が難しいのが目に見えているそうだからである。

小児で見られるものの多くは、アデノイド肥大や口蓋扁桃肥大、鼻疾患など。
通常、成長とともに自然と改善する。
しかし、成長に影響が出ないよう、アデノイドや口蓋扁桃の切除が治療の第一選択となっている。

さて、今回の症例は、そのいずれでもない。
脳梗塞後の半身不随がもたらした睡眠時無呼吸症候群。
顎や喉の筋肉の不随によるおとろえにより、舌の沈下に抵抗できなくなったケースである。
これを、いかにして改善するか。
歯医者とは一見かかわりの薄い分野の治療ですが、私の口腔内装置が主役です。

続きます