外しておきたい抗菌薬、次いで話すのはキノロン系。
製品名は、クラビット、タリビットなど。
この薬の特徴は、とにかく抗菌スペクトルが広いこと。
なんと緑膿菌にまで効く。
つまり、この時点でキノロンを第一選択にしてはならないことがわかる。

緑膿菌は怖くないけど、怖い細菌だ。
健常者では全く問題にならないが、体力の低下した長期入院患者などがかかると、あっという間にやられてしまう。
感染力としては強くはないが、かかってしまうと強烈に怖い。
何より色んな薬剤に耐性を持つため、治療が困難。
自分の常在菌が、耐性菌版の緑膿菌にしないことが肝心。

キノロンもマクロライド同様に、細胞内に入ることができる。
したがって、細胞内寄生細菌にとっておきたいところ。
いろんな菌に効くということで、切り札としてとっておきたい。

ほかにキノロンで問題になるのは、大きいとはいえないものの、副作用。
中枢神経症状があり、めまいなどの軽いものから、意識障害まで様々。
高齢者への投薬は注意が必要。
次いで関節・腱・軟骨などの軟部組織に障害があり、16歳未満の小児や妊婦には禁忌。
他にも不整脈や、光過敏症や偽膜性腸炎などの副作用がある。

実はキノロンは耐性の対策として、大阪大学や神戸大学では、使用が制限されている。
開業歯科医がファーストチョイスとして使うべき薬剤ではない。

テトラサイクリン系の抗菌薬は、スペクトルが最強に広い。
スペクトルの広さは、キノロン以上。
マイコプラズマ、レジオネラ、リケッチア、MRSA、スピロヘータ、はてはマラリアなどの原虫にまで及ぶ。
つまり、この薬は日本紅斑熱やツツガムシ病などのリケッチアの感染症にとっておくべき薬。
マクロライド耐性の、マイコプラズマにも有効。
何より、メチシリン耐性のMRSAに効くのだから、この薬の切り札としての重要性がうかがい知れる。

テトラサイクリンも細胞内に入る抗菌薬。
そして、やはり耐性を獲得されやすい。
副作用としては、骨など硬組織への沈着があるため、歯が黒ずんだ色になってしまう。
いわゆるテトラサイクリン歯といい、これゆえ歯の形成期にあたる小児への投与は禁忌。
テトラサイクリン歯の問題から、歯科での投与は少な目。
他にも、発疹や嘔吐、光過敏などの副作用があり、妊婦への投与は禁忌となっている。

マクロライド・キノロン・テトラサイクリンは抗菌スペクトルの広さと、代替の効かない感染症があるため、みだりに使用すべきではない。
耐性を獲得されれば、治療できるものが、治療できなくなってしまう。

では何を使って歯科感染症にあたればよいか

続きます