歯周病になると、糖尿病リスクが跳ね上がる。
いったいこれはどういうことか。

細菌には毒素が2タイプある。
ひとつは、外毒素、細菌が産生する毒素で、我々が通常想像するのはこのタイプの毒素。
そしてもう一つが、内毒素、これは細菌の構成成分そのものが毒素。

グラム陰性菌の細胞壁の外膜には、リポ多糖という構成成分があり、これは内毒素。
内毒素の体内への侵入は、すなわちグラム陰性菌の侵入である。
体内にリポ多糖が入ってきたのを感知するのが、トールライクレセプター4(TLR4)。
TLR4は免疫にかかわる白血球の一種、マクロファージの表面にある。
リポ多糖がTLR4にくっつくと、マクロファージはTNF-αというサイトカインを放出し、グラム陰性菌の戦いに備える。
マクロファージは遊走性が高く、歯ぐきの奥深くにも滲出している。

サイトカインは広い意味で、細胞間の伝達の役割にかかわる。
TNF-αは、前炎症性サイトカインであり、炎症を誘導する。
TNF-αは発見当初、ガンの出血性の壊死因子を持つサイトカインとして発見された。
そのため腫瘍壊死因子と呼ばれるが、ほかにもいろいろな作用があることが分かってきた。
その作用のひとつが炎症誘導、そして炎症は生体の防御機序である。
マクロファージはここに細菌がいる、炎症をおこせ、という狼煙(のろし)であるTNF-αを放出するのだ。

TNF-αは炎症を誘導するだけでなく、破骨細胞を活性化させる。
破骨細胞は文字通り、骨を壊して回る細胞である。
骨は通常、破骨細胞と造骨細胞がペアとなって、壊しては造るというぐあいに、常に生まれ変わっている。
破骨細胞が優位になったのが、骨粗しょう症(こちらのページに詳しい)

歯周病菌の多くは、嫌気性のグラム陰性菌で占められる。
つまり、リポ多糖を持ちTLR4反応性が高い。
歯周病などで歯ぐきに大量の細菌が存在すると、マクロファージはどんどんTNF-αを産生し、炎症を誘導する。
同時にTNF-αは大事な骨を細菌から守るため、破骨細胞を活性化して、細菌のいる部位から自ら骨を遠ざける。
これが、歯周病で骨が歯の周りから失われるメカニズムである。
歯周病菌自体の外毒素が、骨を溶かしているわけではないのだ。

歯周病を進行させるTNF-αは、実は他の部位で全く違う働きをしている。

続きます

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