骨粗鬆症の治療薬は今世紀に入り大きな革新を迎えた。
ビスフォスフォネート製剤の登場。

我々の体は日々作り替えられている。
これを代謝という。
骨とて例外ではない。

骨粗鬆症は骨密度が低下し、骨折しやすくなった状態を指す疾患。
骨には、骨芽細胞という骨を作り出す細胞と、破骨細胞という骨を壊す細胞がありセットで代謝を担っている。
破骨細胞は、カルシウムイオンの血中濃度を増加する働きもある。
骨を壊しては作ることを、骨のリモデリングという。

年を取り、性ホルモンの分泌量低下や肝臓でのビタミンD合成能の低下が骨吸収を促進する。
骨を作るのと壊すことのバランスが崩れ、破骨細胞が優勢になった状態がすすむと、骨粗鬆症となる。
逆に骨芽細胞が優勢になると、大理石病。
血中カルシウムの低下や、硬くなりすぎた骨は骨折をおこす。

この骨芽細胞と破骨細胞のリモデリングサイクルを止めてしまうのが、ビスフォスフォネート製剤。
骨を壊す破骨細胞の働きを止めることで、骨密度の低下を防ぐ。
癌の患者に、骨への転移を防ぐためにも使用される。

非常に画期的な薬品であったが、重大な副作用がでた。
ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死。
Bisphosphonate related osteonecrosis of the jaw
略して、BRONJ。
我々はブロンジェと呼ぶ。

ビスフォスフォネートを服用している患者が、抜歯などの骨への侵襲を伴う外科処置を受けると、周囲の骨が壊死してしまうことがある。
これが、ビスホスホネート系薬剤関連顎骨壊死。
症状としては、骨の露出、感染、感染に伴う腫脹、疼痛などである。
膿瘍などからゾンデを差し込むと、壊死部位の骨にさわる。

なぜ顎骨にばかりおこるのか。
顎骨は運動量が高く、骨のリモデリングが他の骨の数倍に及ぶからだと言われている。
抜歯などで骨の作り替えが必要になったとき、破骨細胞とセットの骨芽細胞も少なくなっている。
そこに感染がからむと、感染骨質を壊す破骨細胞がない。
そのため、骨は生まれ変わることができずに、壊死してしまう。

壊死した骨は、生体の排除機構としての腐骨分離が起こり、腐骨として遊離することもある。
しかし広範囲の顎骨顎骨壊死では、壊死部位は留まり続けてしまう。

続きます