潜み続ける水ぼうそう

水ぼうそう(水痘/すいとう)にかかった経験のある人は、少なからずいる。
この感染症の原因は、水痘ウイルス(VZV)という、ヘルペスウイルスの一種。
他のヘルペスウイルス同様、一度感染すると、終生体から出ていくことはない。
このことが、厄介なことをもたらすことがある。

水ぼうそう

水ぼうそう、正式名称は水痘。
VZVの初感染でおこり、主に10歳以下でかかる。
感染力はかなり強く、空気感染をおこし、同室に感染者がいると、9割の確率で感染する。
はしかほどではないにしろ、同じ空間にいるだけで高確率で感染をおこす。
N95マスクグレードでなければ、感染は防げない。
罹患者数は、年間100万人ぐらいと、非常にありふれた感染症。

歯科医が使う通常のサージカルマスクでは、感染は防げない。
サージカルマスク

潜伏期間は約2週間ぐらい。
その後は頭から発疹が発生し、全身に広がる。
最初はかゆみを伴う発疹だが、やがて水泡になり、これがつぶれてかさぶたになる。
1週間ほどで、全ての発疹がかさぶたになったところで、感染力も消失し、治癒となる。
発熱は比較的穏やかで、38度ほど、2~3日で治まる。

他にも、一時的な小脳失調をおこすことがある。
運動の統合をおこなう小脳の失調は、ふらふらと酩酊したような歩き方になったり、姿勢の維持が困難になったりする。
快癒すればもとに戻るため、心配は無用。

発熱や水疱などの症状がきついのは、抗体がないと症状が強く出るヘルペスウイルスの特徴。

VZV感染後

いったん症状が消失しても、ウイルスは体内に潜み続ける。
潜伏先は、神経節。
この点も、他のヘルペスウイルスと類似する。

水痘ワクチン

2014年、ついに幼児への水痘ワクチンの接種が義務付けられた。
もともと日本で開発されたこのワクチン、生ワクチンゆえに、5%ほどの割合で、接種後軽い水痘にかかることがある。
水痘とは言え、病原性を非常に弱めたワクチンなので、発疹は数個で済む。

新たな問題

問題は、水痘がヘルペスウイルスのため、再発することがあるということ。
ただし、これはワクチンを打った子供ではなく、かつて水痘に罹患した大人。

神経節にもぐりこんだウイルスは、体内では抗原にはならない。
ウイルスに対する抗体は、年とともに薄れていく。
そうなると、体力低下時に再発を招くことがある。

水痘は年間100万人もの罹患者を出す感染症、普通に生活していればどこかでVZVに暴露される機会は結構ある。
外部から入りこんだVZVは、体内では抗原とみなされ、弱っていた免疫が再び強化される。
このようにして、強化されたVZVへの免疫は、体内に潜むVZVを抑え込む。

ところが近年、少子化などで、水痘のウイルスの発生源たる、初感染時の小児が減っている。
そのためVZVへの接触が少なくなることで、免疫が強化されずに再発が増えている。
再発しないためには、定期的なVZVへの暴露が必要。

これが、ワクチンの接種で、今後VZVへの接触が激減していくことが予想される。
数年後以降、再発は大きな問題になってくるだろう。

次回は、この再発である帯状疱疹を解説する。