ウイルス性肝炎はほかにもある。
A型肝炎は感染力が強く、流行性がある肝炎。
一本鎖のRNAウイルスのため、変異が早い。
A型肝炎の感染経路は経口感染で、発展途上国に多い。
日本では生ガキなどで稀に感染する。
北大病院で患者を診たことがあるが、「みんなで生ガキ食べて私だけが感染した」とのことだった。
2~8週の潜伏期のあと急性肝炎をおこすが、再発はまれで、慢性化はみられない。

C型肝炎(HCV)は、血液製剤の薬害訴訟で有名になった疾患。
変異しやすい一本鎖のRNAウイルスで、感染後にも変異を起こすため慢性化する。
経口感染ではなく、血液感染が主体。
体液での感染は少ない。
つまり、性行為での感染は少ない。
頻度は少ないものの垂直感染をおこし、キャリア化する。
かつては輸血や血液製剤での感染が非常に多かった。
現在では1999年に導入された、HCV-RNA検査が全献血血液に導入され、この経路での感染は激減している。

B型肝炎の同様、針刺し事故で感染する。
針刺し事故での感染率は3%。
刺青や鍼灸院での不完全な滅菌下で感染する。
覚醒剤乱用者では、注射の使いまわしで約50%のHCV罹患率というデータがある。
日本人のキャリア率は1.5%ほどで、200万人ほどが罹患している。

変異の速さから、HCVはワクチンがない。
感染後の転帰は長期的に極めて不良。
感染後は2週から6か月の潜伏期を経て、急性肝炎を発症する。
ただし急性期の症状は軽い。
遺伝子の変異の速さから持続感染をおこし、慢性化する。
こうなると体内からウイルスは駆逐されない。

約7割が慢性肝炎に移行し、20年後の肝硬変への移行は約25%。
30年後の肝臓がんへの移行率は20%にも及ぶ。
(慢性炎症でのガン化のメカニズムはこちらに詳しい)

他にもD型、E型肝炎などもあるが、関わりが少ないのでここには書かない。
今回取り上げた肝炎、特にB型肝炎・C型肝炎は医療の現場で容易に感染をおこす可能性がある。
しかしながら、正しい知識をもって対処すれば感染は防ぐことができる。
そして、キャリアの方はきちんと医療機関を受診する際には申告すること。
感染を防ぐことができれば、きっと将来血液・体液感染性肝炎は撲滅できるはずだ。

不顕性感染と肝炎 完