口腔に巣食う性病

前回は口唇ヘルペスと呼ばれる、単純ヘルペス1型(HSV-1)について解説した。
単純ヘルペスには、もう一つ、性器ヘルペスと呼ばれるものがある。
今回は、こちらのヘルペスを解説する。

単純ヘルペス2型

性器ヘルペスは、単純ヘルペス2型(HSV-2)に分類される。
下半身に症状が出やすく、特に性器や尻に水泡ができる。

感染は、主に性交が原因。
他にも共有している便座や、出産時の産道での垂直感染もおこる。

不顕性感染が多く、初感染時に症状が出ると激しめなのは、1型と同様。
その後は、仙髄の神経節に潜み続ける。
1型同様、体力低下時には、神経節を出て、所属神経の支配領域である性器などに、水泡や潰瘍といった症状を出す。
再発時は免疫の作用で初感染時よりは症状が軽く、体力回復とともに症状は消失する。

治療は、抗ウイルス薬を用いる。
ただし、何もしなくても治るし、体力低下時には再発する点も、1型と同様である。

性病としてのヘルペス

なぜ、歯科の内容なのに、性器ヘルペスを取り上げたのか。
これは歯科領域に、本来なら性器に症状発現する性病が入り込んできているため。

これは、オーラルセックスが広くおこなわれるようになったためである。
内容については詳しく書かない。
厚生労働省の調査では、オーラルセックスをおこなう割合は、若い世代では7割を超える。
そのため、本来なら性器にいる病原体が、口腔内にも感染してしまう。
また逆に口腔内の病原体も、性器に感染する。

ヘルペスは体から駆逐されなく、ウイルスは症状の無いときでも排泄され続けるため、感染は比較的容易。
性器ヘルペスはクラミジアに次ぐ性感染症であり、欧米では約2割の人間が感染している。(日本では統計無し)
性器ヘルペスが口腔領域に感染し、口腔ヘルペスが性器に感染するといったことが頻発し、今や1型2型の分類も意味が薄れつつある。

オーラルセックスでうつる感染症

口腔内に感染する性病は、厚生労働省のHPでは、淋病・クラミジア・ヘルペス・梅毒となっている。
問題なのは、症状がなくても、感染症ゆえに他者にうつしてしまう恐れがあること。
口腔内では症状が出ない場合、気づかぬままに感染を広げてしまう危険がある。

かつて私は位相差顕微鏡で、口腔内の細菌を調べまくっていた時期があるが、トリコモナス原虫なども見つけたことがある。
思う以上に、オーラルセックスによる口腔内の感染は広がっている感があった。

ヘルペス以外の上記の感染症は、見つけてしまえば抗生剤による駆逐は可能。
しかし、ヘルペスのような終生感染のウイルスはどうにもならない。
不特定多数の遊びはほどほどに、というのが結論である。

続きます

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