歯ぐきの構造

二十歳以上の成人の9割が抱える疾患、歯周病。
学校では虫歯のことは教えてくれても、歯周病については何一つ周知されない。

歯医者で治す歯の部位は、大きく2つに分かれる。
ひとつは歯本体の疾患、代表的なものが虫歯。
そしてもう一つは、歯を支える組織である歯ぐき。
我々歯医者は、歯を支える組織を歯周組織と呼ぶ。

歯を支える組織は、骨(歯槽骨)と歯ぐきがありそれぞれ固有の結合様式で歯に結びついている。

正常な歯と歯周組織
歯周組織図

歯の外側の構造

歯の上部はエナメル質と呼ばれる非常に硬い組織でおおわれている。
あまりにも固いので、セメント質だけでは歯は簡単に割れてしまう。
そのため、内部は象牙質と呼ばれる、ややしなやかな組織で裏打ちされている。

歯ぐきのすぐ下でエナメル質は終了しており、そこから下はセメント質と呼ばれる組織が象牙質を覆っている。
セメント質は歯周組織に結合することに特化した組織であり、歯ぐきや歯槽骨からのコラーゲン繊維が組織に入りこみ、非常に強固な結合を構成する。

歯周組織の構造

歯ぐきの構造は外側から、上皮組織、結合組織、歯槽骨からなっている。
上皮組織は簡単に例えると、皮革製品の表側のつるつるした組織。
結合組織は裏側の、ぼそぼそした組織。

歯と歯ぐきとの間には溝があり、歯周ポケットと呼ばれる。
正常値で2ミリ以下の溝になっている。

上皮性付着

歯周ポケットの下では、まず上皮組織が歯ぐきと接する。
接合上皮と呼ばれるこの部分は、ヘミデスモソーム結合と呼ばれる弱い結合で、歯面に吸着している。
歯面に入りこむことができないこの結合は、ゆるやかなもの。
外界から歯周組織を守りきるには、全くの役不足。

接合上皮は歯とゆるやかな吸着を形成している
接合上皮の構造

結合組織性付着

上皮性付着の下には、結合組織がセメント質との間に強力な付着を形成する。
結合組織性付着と呼ばれるこの構造は、結合組織とセメント質間にコラーゲン繊維を介して強力に結びつく。
お互いを縫い込んだような構造となっており、外界と体内を強力に遮断する。
これこそが歯周組織の外界からの防御の要。
体内の大事な骨や組織などを守る絶対防衛線となっている。

結合組織性付着は極めて強力な結合
結合組織性付着

歯根膜

結合組織の下では、歯槽骨とセメント質が、コラーゲン繊維で結合している。
決して骨と歯は直接結合しているわけではなく、歯は歯槽骨にハンモックのようにつるされている状態。
これにより、歯にかかった衝撃は直接骨に伝わることなく、緩和される。
コラーゲン繊維は非常に強力、数10キロもの咬合力を受け止める。

この構造を歯根膜といい、歯根膜の中には神経も配置されている。
そのため、神経を抜いた歯でも感覚を覚える。
髪の毛一本噛んだだけでもわかる感覚は、人間の感覚の中で2番目に鋭敏といわれている。(1番は、目の角膜)
歯を抜くということは、この歯根膜の結合を切り離すこと。

一見簡単に結びついているように見える歯だが、実は非常に合理的な様式で結合している。
しかし、この結合を脅かす存在がある。
歯周病である。

続きます