厄介なところを好む感染症

おたふく風邪はウイルス性疾患。
ムンプスウイルスという病原体により引き起こされる。
ウイルスはその種類によって、標的とする組織が異なる。
ムンプスウイルスが取り付くのは、なんともマニアックなところばかりである。

流行性耳下腺炎とは

症状

おたふく風邪は、その名の通り、顔が腫れてふくれおたふく様の顔貌になるところからきている。
その腫れているところの正体は、耳下腺という最大の唾液腺。
それゆえおたふく風邪の正式名称は、流行性耳下腺炎。
唾液腺のような、分泌をおこなう腺組織を好む。
ムンプスウイルスは、耳下腺のみならず、顎下腺、舌下腺でも症状が見られることがある。
症状は両側性にみられるとは限らず、片方の唾液腺のみで症状がみられる場合もある。

大唾液腺の分布図・ムンプスウイルスは耳下腺を好む
流行性耳下腺炎

発症から、24時間以内に耳下腺の腫脹が6~7割の患者でみられ、48時間後くらいにピークを迎え、4、5日でひく。
発熱は38~39度くらい。
通常症状は1~2週間で寛解する。

唾液腺の炎症ゆえ、酸っぱいものを食べたりすると、耳の前あたりが痛みを感じる。
歯科領域にありながら、歯科ではまずお目にかかることがない感染症である。

感染経路

主な感染経路は、飛沫感染と接触感染で感染力は強い。
感染から発症までの潜伏期間は、2~3週間で、平均18日間。
また、まったく症状の出ない不顕性感染も20~30%ある。

恐ろしい合併症

流行性耳下腺炎で恐ろしいのは、合併症。
無菌性脳髄炎が約10%、思春期以降であれば精巣炎が20~30%、卵巣炎が5%、膵炎が4%ほどおこる。
脳髄炎は嘔吐など症状は重篤ではない。

問題は精巣炎・卵巣炎による後遺障害の不妊と、難聴。
難聴は1000人に1人から5人におこる、そして一度起こると回復しない。

流行性耳下腺炎は軽くみられがちだが、実は恐ろしい疾患なのだ。

治療と予防

治療法は存在しない。
おとなしく症状が無くなるのを待つだけである。

ただし、予防法はある。
ワクチンだ。
ただし任意接種なので、これが流行に拍車をかけてしまう。

おたふく風邪を考える

おたふく風邪を軽くみる人間は多い。
ワクチンが副反応で体に悪いとする人がいる。
挙句の果てには、近くのおたふくにかかった子におたふくを貰いにいったり、おたふくパーティーと称して、感染させてしまう馬鹿な親さえいる。
子供のうちにかかった方が軽い、という迷信をいまだ信じている人がいるのだ。
合併症のまずさには、大人も子供もないのに。

無用のワクチンなど存在しない。
難聴といった、子供に親の罪をかぶせてしまうような事態を避けるためにも、ぜひワクチンを打ってあげてほしい。
まちがってもわざと感染させるようなまねはしないこと。

おたふく風邪は身近だが、実に怖い疾患なのだから。

おたふく風邪・完