根管充填後のトラブル
根管充填の後は、何かと症状が出る場合がある。
今回は、おこりうる症状と、それに対する対処などをまとめていく。
痛み
根管充填をおこなった後には、痛みが出る場合がある。
歯根膜炎
一番多いのは、打診痛。
咬むと痛かったり、ひどい場合には触れても痛いことも起こりうる。
歯を支える組織は、実は人間の感覚で2番目に敏感とされている。
一番目は、目の角膜。
ホコリひとつ入っただけでも大事である。
そこまでではないにしろ、歯でも髪の毛1本噛んだだけでもわかる。
この感覚を検知しているのが、歯を支える歯根膜。
根管充填の際、圧力をかけて充填するため、この歯根膜に過度の刺激が加わる場合がある。
これにより、歯根膜炎が誘発される。
こうなってしまうと、歯に力が加わると痛みが出る。
歯根膜炎で痛みが出ると、経過は長いことが多い。
数か月にわたり痛みが残る場合があるが、必ずひくときはやってくる。
痛みの程度がひどい場合には、消炎鎮痛剤の連続投与で消炎をはかることもある。
残髄炎
取り残した神経に炎症や感染が起きた場合におこる。
主に何もしなくても痛む自発痛が多い。
根管の形は複雑で、術者の手の届かないところで神経が残っている場合がある。
また、直線的な根管でも、拡大が甘いとおこる。
この場合は、充填物を除去し、残った神経を除去、もしくは薬品で枯死・固定・融解などをする必要がある。
異物留置
主に治療に用いるファイルの折れ込み。
これは医療事故ではなく、偶発症とされている(医療訴訟の判例でも)。
根管の状態によっては、通常の治療においてファイルが内部で破折することは避けれない場合がある。
素直な形状の根管ではまずおこらないが、湾曲・狭窄などがあれば歯質がファイルをがっちりくわえ込んでしまい破断する。
このような歯は、神経の治療が必要になった時点で、このような運命をたどることが決まっていたといって良い。
ファイルが破断しても、細菌感染がなければ臨床的に問題がない場合が多い。
ただし、感染がある場合の予後は悪く、最終的に残せないこともままある。
ファイルが折れこんだまま補綴されている歯牙(他院治療)
ファイルの除去
ファイルの除去は非常に困難。
マセランキットという除去の道具は、折れたファイルの周りを円筒形の切削器具で掘り進め、最後にファイルを把持する器具でつかんで引っ張り出す。
直線的な根管のみ使用できるが、そもそも直線根管ではファイルが折れることはめったにない。
私はファイルの横を避けるように掘り進め、バイパスを形成する手法を用いることが多い。
バイパス越しに根管充填をおこなうこともあるし、運が良ければ超音波チップをあてて、折れたファイルが外れることもある。
いずれの方法をとるにせよ、保険内の治療では限度がある。
とにかく神経の治療にならないよう早めに治療することこそ、最大の予防である。
ファイル除去の器具・マセランキット
細菌感染
細菌感染してしまった場合は、総じて予後が悪く、再根管治療が必要となる。
ただし、細菌感染が判明するのは、かなり時間がたってから。
多くは年単位以上の時間がたってからである。
レントゲン像で、根尖付近に病巣が形成されていたり、歯ぐきから膿の出る穴(フィステル)ができることで察知する。
放置すると、病巣は大きくなり、周辺の組織を壊したり、体力の低下時に腫れたりする。
このような症状が出た場合は、かぶせもの等を外し、再び治療に入る必要がある。
続きます