小児の治療・治療手法 後編
乳歯の治療
重度の虫歯
虫歯が神経にかかった場合の治療
通常の永久歯では、根管治療の処置後はガッタパーチャーと呼ばれる、天然ゴムや酸化亜鉛などを主成分とした弾性材料で緊密に充填される。
ガッタパーチャーは、長期的に体内で吸収される。
ただし、根管充填されているような歯牙の中には、吸収は及ばない。
乳歯の治療で問題になるのは、生え変わりに時期に歯根が吸収されることにある。
下から永久歯が萌出してくることで、その付近の破歯細胞の活性が活発になり、徐々に歯根は吸収される。
それにより、歯を支える能力が低下することが、乳歯がぐらぐらになって脱落する原因。
破歯細胞は塩酸を分泌して歯根を溶かすのであるが、ガッタパーチャーは溶けない。
つまり、永久歯と同じような治療をすれば、歯根吸収の妨げになってしまう。
それゆえ、乳歯の治療は、歯の生え変わりを妨げないことを念頭に置いた治療法がおこなわれる。
生活歯髄切断
う蝕が冠部歯髄に達し、感染がない場合におこなわれる。
神経の部分摘出である。
冠部歯髄を除去し、神経切断面をラウンドバーなどで露出させる。
出血をホルマリンクレゾール(FC)で固定することでとめ、FCとユージノールセメントの硬めの練和物でシールし、セメント等で封鎖する。
切断部以下の神経は、知覚を感じないレベルにまで減少するも、生き残っている。
そのため、歯根の吸収の妨げとならない。
保険点数の割に手間がかかり、感染が許されないため、おこなう歯医者は少ない。
私は慣れているので、メインとしている。
何か問題があれば、その時点で抜髄等の処置などに移行すれば良いと考えている。
生活歯髄切断に使用するFC糊剤・パルパック
抜髄
神経の全摘出である。
乳歯の根管は扁平で湾曲しているため、なかなかに難しい。
とはいえ、う蝕の程度によっては抜髄せざるを得ない場合がある。
無菌化した根管には、歯根の吸収に伴って一緒に吸収される水酸化カルシウム製剤を注入する。
感染根管治療
根管内に細菌が侵入し、感染した状態。
永久歯の治療同様、根管内の感染歯質の除去と、無菌化のため回数がかかる。
無菌化後は、抜髄後同様、水酸化カルシウム製剤を詰める。
永久歯と違い根管の形態が複雑ゆえ、予後が悪い場合もある。
感染歯があると、代生の永久歯はそこを避けるように萌出するため、歯並びに影響がある場合がある。
そのため、予後に問題がある場合には、無理やり保存せずに抜歯の対象とする場合がある。
続きます