50代女性、味覚が鈍くなったことを主訴に来院された。
自分では今までと変わらぬつもりで調理していたが、最近味付けが濃くなったと家族から指摘されたという。

口腔内の所見は、舌苔がかなり厚積している。
口呼吸と関連ある疾患や、所見はなし。
ただ、夜中口渇のために目が覚めることがあるという。
全身疾患としては軽度の高血圧あり、アムロジピンを服用している。
後は、ときおり頭痛。

味覚障害にはいくつかの代表的な原因がある。
最も多いとされているのが、亜鉛の不足。
舌にはいろんな構造があり、味を感じる部分も場所によって異なる。
代表的な味覚器官である味蕾の維持には、亜鉛を必要とする。
亜鉛の不足は、味覚センサーである味蕾の維持を妨げ、結果として味覚の減退をもたらす。
極端なダイエットで陥りやすい。

意外と多いのが薬物の副作用。
これは薬物そのものの働きというよりも、その薬物の唾液分泌抑制作用によるものが大きいと私は考えている。
抗うつ剤などはその典型であるが、著しい唾液分泌抑制を呈する。
主に口臭分野の解決から得た知見であるが、唾液分泌を亢進するような治療で解消するため。
一部の漢方薬で、唾液を分泌に効果のあるものがある。
北大の予防科の兼平先生にいろいろご指導いただいた、内容はまたいつか。

後は心因性やら、疾患やらも多少ある。
例えば、ガンがある場合の酸味など。

アムロジピンは高血圧の薬としては割と弱い部類に入る。
ACE阻害薬は味覚障害を惹起しやすいが、Ca拮抗薬のアムロジピンにそこまでの効果があるか。

ここで留意すべきは、夜中の口渇。
鼻炎や花粉症などからの口呼吸の可能性はないが、習慣性のものは疑われる。
食事では特に不自由は感じられないという。

私は患者としゃべるとき、口呼吸などの習癖を観察するクセがついている。
口ではないが、あることに気が付いた。

まばたきが多く、何となくぎこちない。
眼瞼結膜をチェックする。
やっぱりだ。

眼瞼結膜とはまぶたの内側。
通常白く、黄疸などでは黄色くなる。
そこが、赤く充血していた。

続きます