規格の無いインプラント
私はインプラントを打たない。
自分で開業するにあたり、やめてしまった。
インプラントには様々なリスクがある、というのがその理由。
今回は、そのリスクのひとつを解説する。
絶対にインプラントを打つ、という人は、インプラントやドクター選びの参考にされたら良いかと思う。
互換性がない
スクリュータイプのインプラントが主流になって、20年以上の年月がたつ。
歯科において、失われた歯の代わりに、自分の歯のようにかめるインプラントは、画期的な発明だ。
スウェーデンで生まれた現行型のインプラントは、歯に埋め込まれるチタン製のインプラント体、歯冠部のクラウン、そしてその両者をつなぐアバットメントで構成されている。
問題はここにある。
3ピースからなる人工物は、規格がないということ。
それぞれのピースは、各メーカーで、すべてオリジナル。
アバットメントが壊れてしまえば、そのメーカー以外の物は使えない。
ミリ規格のナットに、インチ規格のネジは入らないのと同じ理由。
乱立するインプラントメーカー
世界にはインプラントメーカーが、100以上ある。
それぞれが独自の規格をもっているわけだ。
いくつかの規格にまとまってくる動きもみられるが、それでも10ほども規格がある。
ということは、インプラントメーカーが倒産したり、吸収合併の憂き目にあえば、規格自体が消失してしまう。
もしインプラントが不具合をおこしてしまうと、インプラント体は単なる骨に埋まった高価なチタンのボルトにしかならない。
そしてそのような事例は、今までも頻繁におこってきたこと。
家電の部品が無くなってしまうのとは、わけが違うのだ。
インプラントの信頼性
インプラントの価値は、機能もさることながら、規格の存続の信頼性も含まれているといって良い。
簡単に説明すると、
インプラントの価値 = インプラント本体の性能 ✖ メーカー・メーカーの存在する国家の安定性
例えば、いくら良いものでも、メーカーが倒産したり、メーカーのある国の為替が不安定になってメーカーがパーツをつくれなくなれば、修理や保証が効かなくなる。
もちろん医療問題に発展するようなことがあっても、責任の所在は消えてしまうだろう。
信頼できるメーカー
ではどこのメーカーが信頼がおけるのであろうか。
国際的に信頼・シェアがあるのは、
ブローネマルク・ノーベルバイオケア(スウェーデン)
ストローマン・ITI(スイス)
アストラテック(スウェーデン)
これに加えて、
ジンマ―・バイオメット3i(アメリカ)
正直、これ以外のメーカーは私はリスクがあると思う。
信頼がいまいちな国産インプラント
日本におけるインプラントは、保険治療中心ということもあり、正直後れを取っている。
歯科医師のレベルが低いことも、原因のひとつ。
シェアが低く、将来どうなるか分かったものではない。
国産だから安心、とうたっている歯科医院もあるが、インプラントにおいて国産は不安材料が山積みといってよい。
最近増えてきたのは、韓国産。
正直、論外と言い切ってよい。
製品の質云々ではなく、近い過去にデフォルト(国の財政破綻)をおこした国家である。
為替リスクが大きい国の製品は、メーカーの存続が国家の情勢に左右される。
日米から通貨スワップを切られ、非常に不安定で、国ごといつ飛んでもおかしくない。
総論
最近増えている格安インプラントは、もれなくこのような不安定なメーカーの製品。
また、元値が安いため、歯科医院のインプラントの値段が高くても採用している医院が多くある。
インプラントの選択は、インプラントの性能のみで選んではダメだ。
将来的に安定した保障・修理を受けられるメーカーのものが望ましい。
参考になれば幸いである。